使徒行傳(明治元訳) 第一章

提供:Wikisource

第一章[編集]

1 テヨピロ(※1)よわれすでに前書まへのふみつくりおほよそイエスのはじめおこなへるところをしへところしる
2 そのえらびたる使徒しとたち聖靈せいれいよりめいぜしのちあげられしときにまでいたれり
3 それイエスは苦難くるしみうけのちおほくの確據たしかなるしるしおのれいきたることあらはじふにちあひだかれらにかみくにことつきかた
4 また彼等かれらともあつまめいじけるは爾曹なんぢらエルサレムをはなれずしてわれきけところちち約束やくそくたまひしことまつべし
5 そはヨハネはみづてバプテスマをなしたれども爾曹なんぢらひさしからずして聖靈せいれいによりバプテスマをうくべければなり
6 あつまれるものかれにとひけるはしゆなんぢいまくにをイスラエルにかへさんとする
7 彼等かれらいひけるはちちそのちからにてさだめたまへるときまた爾曹なんぢらしるべきところあら
8 されども聖靈せいれいなんぢらにのぞむよりのち爾曹なんぢら能力ちからうけエルサレム、ユダヤ全國ぜんこくサマリアおよびはてにまで證人あかしびとなるべし
9 このこといひをはりしのち彼等かれらみるうちあげらるくもこれをうけみえざらしめたり
10 イエスののぼれるときかれらてんあふたりしにしろきころもたる二人ふたりひとありてかたはらたち
11 いひけるはガリラヤびと何故なにゆゑてんあふぎたてるや爾曹なんぢらはなれてんあげられしこのイエスは爾曹なんぢらかれてんのぼるをたるそのごとまたきたらん

12 そのときかれら橄欖かんらんなづくやまよりエルサレムにかへこのやまはエルサレムにちかおほよ安息日あんそくにちゆきうるみちのりなり
13 すでいりたかどののぼれりこことどまれるものはペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、ピリポ、トマス、バルトロマイ、マタイ、アルパイのヤコブ、ゼロテといへるシモン、ヤコブの兄弟きやうだいなるユダなり
14 すべてこの人々ひとびとをんなたちおよびイエスのははマリアまたイエスの兄弟きやうだいともこころあはせてつね祈禱いのりつとめたり

15 當時そのころペテロ弟子でしたちそのあつまれるものおほよそひやくじふにんなり)のなかたちいひけるは
16 人々ひとびと兄弟きやうだい聖靈せいれいダビデのくちによりてイエスをとらふものみちびけるユダにつきあらかじめかたりたるこの聖書せいしよかならおうずべかりしなり
17 そはかれ我儕われらともつらなりてこのつとめうけたればなり
18 このひと不義ふぎあたひをもて地所ぢしよかひまたさかさまおち眞中ただなかよりやぶそのはらわたことごとくながれいでたり
19 このことエルサレムにすめすべてひとしれしかばその地所ぢしよ方言くにことばにてアケルダマとよぶこれをとけ地所ぢしよなり
20 まきしるしかれいへむなしくなれそのうちひと住居すまはするなかかれつとめ他人ひとさせよといへ
21 このゆゑしゆイエスの我儕われらうち往來ゆききたまひたるあひだ
22 すなはちヨハネのバプテスマよりはじめわれらをはなれあげられしいたるまでつね我儕われらともありものうち一人ひとりわれらとともそのよみがへりしこと證人あかしびとなるべきなり
23 ここおいてバルサバととなふるヨセフまたはユストといへものとマツテアとの二人ふたりあげ
24 いのりいひけるは衆人すべてのひとこころしりたまふしゆねがはくは奉事つかふることと使徒しとつとめさせんがためこの二人ふたりのうちいづれえらびたまひしかしめたま
25 すでにユダはこのつとめはなれそのゆくべきところゆきたり
26 かくくじとりしにマツテアにあたりければかれじふいちにん使徒しとたちともつらなれり

※1 明治14(1881)年版では「テヲピロ」→「テヨピロ」。