マルコ傳聖福音(新契約聖書) 第十六章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第十六章[編集]

1 かくて安息日の過ぎければ、マグダラのマリア及びヤコブの〔母〕なるマリア幷にザロメは、到りて彼に油ぬらんために、香料を買へり。
2 また週の首〔の日〕の朝甚だ早く、の昇りたるとき、彼等は墓に來れり。
3 彼等は己自らに對ひて云へり。誰ぞ墓の入り口より石を我等のために、轉ばし去るならんか。
4 かくて彼等は視上げしに、石の轉ばし去られたるを看る、そは一方ならず大なる〔石〕なりければなり。
5 また墓に入り來りて、彼等は白き衣裳を着て、右の方に坐する〔一人の〕若者を見たり。されば彼等は甚く駭けり。
6 然るに彼は彼等に云ふ、駭く勿れ。汝等は十字架につけられ給ひしナザレ人なるイエスを索む。彼は起き給へり、此處におはさず、見よ、これ彼を置きしところの場所〔なり〕。
7 されど往け。彼の弟子等とペテロとにいへ、彼は汝等に先立ちてガリラヤに往き給ふと。彼處にて汝等は目のあたり彼を見るべし、彼の汝等にのたまひしが如し。
8 されば彼等は出で來りて、速に墓より遁れたり。かくて慄と駭とは彼等に憑きたり。されば誰にも何事をもいはざりき。そは懼れたればなり。

9 また週の首〔の日〕夜明に立ち上がりて彼は先づ、七つの惡鬼を逐ひ出だし給ひし、マグダラのマリアに現はれ給へり。
10 彼は往きて、悲しみ且つ泣くところの、彼と共に在りし人々に報じたり。
11 されど彼等は彼の生きておはして、かの婦に看られ給ひしことを聞きながら信ぜざりき。
12 また此等の事の後、彼等のうちの二〔人〕田舎に往かんとて歩めるとき、彼は別の姿にてこれに顯はれ給へり。
13 されば彼等は去つて、餘の人々に報じたり。されど彼等は彼等を信ぜざりき。
14 その後彼等の席に着きしとき、彼等十一に彼は顯はれ給ひて、その不信なると、頑なる心とを非難し給へり。そは起き給ひし彼を看たる人々を、彼等は信ぜざりしが故なり。
15 かくて彼等にのたまへり、遍く世界に往き、福音をすべての創造せられたるものに宣べよ。
16 信じ且つバプテズマせられたる者は救はるべし、されど信ぜざる者は罪に定めらるべし。
17 また信じたる者には此等の徴從ふべし、我が名に於て惡鬼を逐ひ出だすべし、新しき言葉にて彼等はものがたるべし。
18 彼等は蛇をつかみ上ぐべし。また死ぬべきものを飮むとも、必ず彼等を害はじ。病身なる者の上に彼等は手を按かん、かくて彼等は良くなるべし。
19 是の故に主は彼等にものがたり給ふうちに、天に舉げられ給へり。かくて神の右手に坐し給へり。
20 かくて彼等は出で來りて遍く〔福音を〕宣べたり。主は彼等とともに働き給ひ、且つこれに從ふ徴によりて言を堅ふし給ひたり。アメン。