ヘブル人に贈れる使徒パウロの書状(新契約聖書) 第十三章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第十三章[編集]

1 兄弟の睦を存すべし。
2 旅人を懇にすることを忘るる勿れ、そは或る人これによりて圖らずも天使等を宿したればなり。
3 〔己も〕ともに繋がるる如く囚人等を憶へ。〔また〕己も體に於てある如く、苦しめらるる人々を〔憶へ〕。
4 婚姻はすべてに於て貴ばしめよ、また房事は汚れしむる勿れ。神は淫行する者、及び姦淫する者を裁き給ふべし。
5 〔汝等の〕世過ぐし金錢に淡かれよ。現在に滿足せよ。そは「われ必ず汝を去らざるべく、また必ず汝を見捨つることなかるべし」と、彼謂ひ給ひたればなり。
6 されば勇みて我云はん.「主は我がために助くる者におはせば、われ懼れじ、人われに何を爲さんや」。
7 汝等を導く者を憶ひ出でよ、彼等は汝等に神の貢をものがたりたる者なり。その振舞の給果を看て、その信仰に倣へ。

8 イエス・キリストは昨日も今日もとこしへまでも、彼にておはします。
9 さまざまなる敎と、異なる〔敎〕とに搬び廻はさるる勿れ。そは惠をもて心を堅うし、食滋をもてせざるは良き事なればなり、それらのうちに歩みたる者は益せられざりき。
10 我等は祭壇あり、幕屋に服事する者は之につきて喰ふの權を有せず。
11 そはその生き物の血は、罪のために祭司長に携へられて、かの聖所に入り、その體は營のそとにて燒き棄てらるればなり。
12 かるが故に、イエスも己の血によりて民を聖めんために、門の外にて苦を受け給ひたり。
13 されば我等は彼の誘を携へつつ、營のそとに出でて、彼の許に來るべし。
14 そは我等此處には留まるべき市を有たず、されど將に來らんとするものをば索めつつあればなり。
15 此のゆゑに我等は彼によりて、絕えず神に讃美の献げ物を献ぐべし、卽ち彼の名に唇の實を告白するなり。
16 またよろしわざと親しき交とを忘るる勿れ。そは此の如き献げ物を神は嘉し給へばなり。

17 汝等を導く者に順ひ且つ服へ、そは彼等は言を差し出だす者として、汝等の魂のために目を覺ましをればなり。是れ彼等の此の事を歎きてにあらず、喜びて爲さんためなり。〔然らざれば〕汝等のために益なかるべし。
18 我等のために祈れ、そは我等すべての事に良く振舞はんと欲して、良き良心を保つことを確信すればなり。
19 されど速に汝等の許に我の戻されんため、此の事を爲さんことを溢るるばかりに汝等に勸む。
20 されば平和の神、とこしへの契約の血もて、羊の大牧者なる我等の主イエスを、死人のうちより連れ歸り給ひし者は、
21 その面前に嘉せらるることを、イエス・キリストによりて汝等のうちに爲し給ひつつ、その意を爲さしめんために、すべての善きわざに於て汝等を完うし給へかし。世々の世々に至るまで榮光彼に〔あれ〕。アメン。

22 兄弟よ、われ汝等に勸む、この奬の言を堪へ忍べ、そはわれ汝等に少しく書き贈りたればなり。
23 汝等テモテの釋されたるを知れ。彼もし速に來らば、われ彼と共に汝等を目のあたり見るべし。
24 汝等の、導く者のすべてと聖徒等のすべてとに挨拶せよ。人々イタリヤより汝等に挨拶す。
25 惠汝等のすべてのうちに〔あれ〕。アメン。
テモテに托してヘブル人に、イタリヤより書き贈れり。