ピリピ人に贈れる使徒パウロの書状(新契約聖書) 第三章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第三章[編集]

1 その餘、我が兄弟よ、主に在りて喜べ。此等の事を汝等に書き贈るは、我にとりて厭はしからず、汝等には安全なり。
2 犬を視よ、惡しき働き人を視よ、切り放せる者を視よ。
3 そは我等靈をもて神に服事し、またキリスト・イエスにありて誇り、且つ肉に頼まざる者は割禮あればなり。
4 たとひ我は肉に於ても頼を有つと難ども、〔これを頼まず、されど〕別の人もし肉に於て頼むべき〔ところあり〕と思はば、我は勝れり。
5 卽ち八日めの割禮、イスラエルの子孫の、べニヤミンの族の、ヘブル人のうちのヘブル人、掟に循へばパリサイの人、
6 熱心に循へば集會を迫害し、掟にあるところの義に循へば缺なき者になれり。
7 されど〔曾て〕我がためにとくなりしもの、此等のものを、キリストのゆゑに損と思へり。
8 加之キリスト我が主なるイエスを知るは、優れたる事なるのゆゑに、我はすべての物を損なりと思ひつつ、彼のゆゑに、すべての物を損せしかど屑芥ちりあくたなりと思ふ。是れキリストを得、
9 且つ掟に本づきての我が義にあらず、されどキリストの信仰によりての〔義〕、卽ち信仰にありて神に本づきての義を有ちつつ、彼のうちに見出だされ、
10 彼を知り、卽ちその死と同じ態になりて、その甦の力、またその苦の親しき交を〔知り〕、
11 如何にもして、死人の甦にまで達せんためなり。
12 〔されど〕われ既に〔これを〕受けたり〔と表ひ〕、或ひは既に完うせられたりと〔云ふ〕にはあらず、されど捉ふることを得んかと、我は追ひ求めつつあり、これがために我はキリスト・イエスより捉へられたるなり。
13 兄弟よ、我は未だ自ら〔これを〕捉へ得たりと勘へず、されど一事、卽ち後ろに在るものを忘れ、前に在るものに向ひて身をぬきんじ、
14 我はキリスト・イエスに於て神の〔賜ふ〕、高き召の褒美のために、目當に循ひて迫ひ求む。
15 是の故に完き者はみなかく思ふべし。また汝等もし異なる事を念はば、これをも神は汝等に啓示し給ふべし。
16 されど我等は到りしところにて、同じのりをもて歩むべし。

17 兄弟よ、我にともに倣ふ者となれ、且つ汝等が我等を型となしたるままに、その如く歩む人々を饗みよ。
18 そは我が〔嚢に〕屢々汝等に云ひ、今も泣きながら云ふところの、歩みつつある多くの者、彼等はキリストの十宇架の敵〔なればなり〕。
19 彼等の終は滅〔なり〕、彼等の神はその腹〔なり〕、且つその耻をもて榮光とす、彼等は地の事を思ふ。
20 そは我等の民籍は天に在り、我等はその處より〔來り給ふ〕救主、主イエス・キリストを待ちつつあればなり。
21 彼はすべてのものを己に從はしむるその力の働に循ひて、我等の卑しき體を變へて、その榮光の體に象らしめ給はん。