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私設鐵道法

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朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル私設鐵道法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽

明治三十三年三月十五日

内閣總理大臣侯爵山縣有朋

遞信大臣子爵芳川顕正

法律第六十四號

私設鐵道法

第一條 本法ハ軌道條例其ノ他特別ノ法令ニ規定スルモノヲ除クノ外一般運送ノ用ニ供スル私設鐵道ニ之ヲ適用ス

私設鐵道株式會社カ運送營業ノ為ニ支線ヲ敷設スルトキハ現ニ一般運送ノ用ニ供セサル場合ト雖モ本法ヲ適用ス

第二條 私設鐵道株式会社ヲ發起セムトスル者ハ左ノ書類圖面ヲ具シ主務大臣ニ假免許ヲ申請スヘシ

一 起業目論見書
二 假定款
三 起業カ公共ノ利益タルコトヲ證スル調書
四 線路豫測圖及説明書
五 建設費用ノ概算書
六 運送営業上ノ收支概算書及説明書

起業目論見書ニハ發起人各自署名捺印スルコトヲ要ス

第三條 主務大臣ハ前條書類圖面ノ外審査ニ必要ト認ムル書類圖面ノ呈出ヲ命スルコトヲ得

第四條 主務大臣ハ假免許ノ申請ヲ審査シ起業ノ大體ニ不都合ナキト認ムルトキハ假免状ヲ下付スヘシ

第五條 假免許ニハ本免許申請ノ期限ヲ附ス

前項期限内ニ本免許ノ申請ヲ為ササル時ハ假免許ハ其ノ效ヲ失フ但シ正當ノ事由アリテ延期ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス

第六條 主務大臣ハ公益上必要ト認ムルトキハ申請事項ヲ變更セシメ又ハ假免許ニ條件ヲ附スルコトヲ得

假免許ニ附シタル條件ニ違反シタルトキハ假免許ハ其ノ效ヲ失フ

第七條 發起人假免許状ノ下付ヲ受ケタルトキハ定款ヲ作リ起業目論見書ヲ公告シテ株主ヲ募集スルコトヲ得

定款ハ假定款ニ準シ之ヲ作ルコトヲ要ス

第一項ノ公告ニハ本法ニ依リ假免許状ヲ受ケタル旨及假免許ノ年月日ト各株式申込人ニ假免許状竝定款ヲ展閲セシムル旨トヲ記載スルコトヲ要ス

第八條 發起人總員ハ少クトモ總株式ノ十分ノ二ヲ引受クルコトヲ要ス

第九條 株式ハ金錢ヲ以テスルノ外之ヲ引受クルコトヲ得ス

株金ノ第一回拂込金額ハ株金ノ十分ノ一以下迄下ルコトヲ得

第十條 發起人カ株式ノ總數ヲ引受ケタルトキ又ハ創立總會終結シタル時ハ取締役ハ左ノ書類圖面ヲ具シ主務大臣ニ本免許ヲ申請スヘシ

一 定款
二 工事ノ方法書
三 線路實測圖
四 工費豫算書

前項ノ申請ニハ左ノ書類ヲ添付スヘシ

一 起業目論見書ノ謄本
二 假免許状ノ謄本
三 發起人ニ於テ株式ノ總數ヲ引受ケタルトキハ檢査役カ裁判所ニ為シタル報告書ノ謄本及裁判所カ檢査役ノ報告ヲ聴キ為シタル決定書ノ謄本
四 株主ヲ募集シタルトキハ株式申込證ノ謄本、發起人、取締役、監査役又ハ檢査役ヨリ創立總會ニ為シタル報告ノ要領及創立總會ノ議事及決議ノ要領

第十一條 鐵道延長ノ假免許及本免許ノ申請ハ定款ノ変更ト同一ノ方法ニ依リ株主總會ノ決議ヲ經ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス

前項本免許ノ申請ハ定款變更ノ決議認可ノ申請ト共ニ之ヲ為スコトヲ要ス

第十二條 創立總會ニ於テ設立ノ廢止ノ決議ヲ為シタルトキハ主務大臣ニ假免許状ヲ返納スヘシ

第十三條 主務大臣ハ第十條ノ書類圖面ヲ審査シ妥当ト認ムルトキハ本免許状ヲ下付スヘシ

本免許ニハ工事竣功ノ期限ヲ附ス工事竣功ノ期限ハ工區ヲ分チテ之ヲ附スルコトヲ得

公益上必要ト認ムルトキハ主務大臣ハ本免許ニ條件ヲ附スルコトヲ得

前項ノ規定ハ許可又ハ認可ノ場合ニ之ヲ準用ス

第十四條 會社ノ設立ノ登記ニハ商法ニ規定スル事項ノ外本免許ノ年月日ヲ記載スルコトヲ要ス

設立ノ登記ノ期間ハ本免許ヲ受ケタル日ヨリ之ヲ起算ス

第十五條 本法及商法ニ依リ登記ヲ為シタルトキハ主務大臣ニ屆出ツヘシ

第十六條 本免許ヲ受ケタル後六箇月内ニ設立ノ登記ヲ為ササル時ハ免許ハ其ノ效ヲ失フ

第十七條 會社ハ主任技術者ヲ置キ技術ニ關スル事項ヲ擔任セシムヘシ

主任技術者ヲ不適任ト認ムルトキハ主務大臣ハ其ノ解任ヲ命スルコトヲ得

第十八條 主務大臣ハ監督上必要ト認ムルトキハ所部ノ官吏ニ命シ會社ノ取締役會議又ハ株主總會ニ臨監セシムルコトヲ得

第十九條 主務大臣ハ監督上必要ト認ムルトキハ所部ノ官吏ニ命シ會社ノ會計財産ノ實況ヲ檢査セシムルコトヲ得

檢査官吏ハ會社ノ金庫、財産現在高、帳簿及總テノ書類ヲ檢査シ取締役其ノ他ノ役員又ハ使用人ニ説明ヲ求ムルコトヲ得

第二十條 主務大臣ハ會社ノ會計ニ關スル準則ヲ設クルコトヲ得

第二十一條 定款變更ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效ヲ生セス

定款ハ本免許ニ附セラレタル條件ニ違反スルコトヲ得ス

第二十二條 定款變更ニ因リ登記事項ニ變更ヲ生シ登記ヲ為ストキハ定款變更認可ノ年月日ヲ併セテ記載スルコトヲ要ス

第二十三條 會社ハ株式全額拂込前ト雖主務大臣ノ認可ヲ受ケ線路ノ延長又ハ改良ノ費用ニ充ツル為其ノ資本ヲ増加スルコトヲ得

第二十四條 會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ他ノ業務ヲ營ムコトヲ得ス

第二十五條 會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ他ノ會社ノ株式ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ之ヲ受クルコトヲ得ス

第二十六條 會社ハ株主總會ノ決議ヲ經主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ鐵道ノ貸借又ハ營業ノ管理委託ヲ為スコトヲ得ス

前項ノ決議ハ定款變更ト同一ノ方法ニ依ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス

營業ノ管理委託ヲ受ケタル會社ハ其ノ管理ニ付監督官廳ニ對シ其ノ責ニ任ス

第二十七條 會社ノ取締役ソノ他ノ役員又ハ使用人ハ監督官廳ノ呼出ニ應シ説明ヲ為スノ義務ヲ負フ

第二十八條 會社ハ鐵道臺帳ヲ調製シ之ヲ備置クコトヲ要ス

鐵道臺帳ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

第二十九條 會社カ社債ヲ募集セムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ

社債募集ノ公告ニハ商法ニ規定スル事項ノ外認可ノ年月日ヲ併セテ記載スルコトヲ要ス

社債ハ總株金四分ノ一以上ノ拂込アリタル後ニ非サレハ之ヲ募集スルコトヲ得ス

第三十條 會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ鐵道及之ニ屬スル物件ヲ抵當トシテ負債ヲ為スコトヲ得ス

前項ノ負債ハ定款變更ト同一ノ方法ニ依ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス

第三十一條 前二條ノ債務ノ額ハ合セテ總株金拂込額ヲ超ユルコトヲ得ス

第三十二條 會社ハ毎営業年度中ニ支拂フベキ社債及負債ノ元利金ヲ控除シタル後ニ非サレハ利益ノ配當ヲ為スコトヲ得ス

第三十三條 鐵道及之ニ屬スル物件ハ質權ノ目的ト為スコトヲ得ス

第三十四條 鐵道ニ屬スル物件ノ貸渡又ハ譲渡ハ主務大臣ノ定ムル規定ニ依リ認可ヲ受クヘシ

第三十五條 會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ合併ヲ為スコトヲ得ス

合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リ設立シタル會社ハ合併ニ因リ消滅シタル會社ノ免許ニ屬スル權利及義務ヲ承継ス但シ主務大臣ニ於テ之ヲ變更スルノ條件ヲ附シタルトキハ此ノ限ニ在ラス

會社合併ノ登記ニハ商法ニ規定スル事項ノ外合併ノ認可ヲ受ケタル年月日ヲ併セテ記載スルコトヲ要ス

第三十六條 工事方法ノ變更及假設ノ工事ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス

第三十七條 工費豫算ノ變更ハ主務大臣ノ定ムル規定ニ依リ認可ヲ受クヘシ

第三十八條 鐵道ノ建設、設計等ニ關スル法令ノ制定變更ニ因リ工事方法ハ変更ヲ受ク

第三十九條 會社ハ設立登記ノ費ヨリ六箇月内ニ鐵道ノ敷設工事ニ著手シ本免許状ニ記載シタル期限内ニ竣功スヘシ

前項ノ著手期限ハ鐵道延長ノ場合ニ在リテハ其ノ本免許状下付ノ日ヨリ之ヲ起算ス

天災其ノ他避クヘカラサル事變ノ為期限内ニ敷設ニ著手シ又ハ竣功スルコト能ハサルトキハ會社ハ期限ノ伸長ヲ申請スルコトヲ得

前項ノ申請ハ天災事變ノ止ミタル日ヨリ一箇月内ニ之ヲ為スコトヲ要ス

自己ノ過失ニ歸セサル正當ノ事由ニ因リ期限内ニ敷設ニ著手シ又ハ竣功シ難キトキハ期限経過前ニ延期ヲ申請スヘシ延期ノ期間ハ通シテ原期間ノ半ヲ超ユルコトヲ得ス

法令ノ結果ニ因リ工事方法ニ変更ヲ生シ又ハ主務大臣ノ命令ニヨリ若クハ其ノ認可ヲ受ケ工事方法ヲ變更シタルトキハ更ニ期限ノ指定ヲ申請スルコトヲ得

前項ノ申請ハ法令ノ結果ニ因ルモノハ其ノ施行ノ日ヨリ一箇月内ニ主務大臣ノ命令ニ依ルモノハ其ノ命令ヲ受ケタル日ヨリ一箇月内ニ又認可ヲ受クヘキモノハ其ノ認可ノ申請ト同時ニ之ヲ為スコトヲ要ス

第四十條 軌間ハ特許ヲ得タルモノヲ除クノ外三呎六吋トス

第四十一條 左ニ掲クルモノヲ以テ鐵道用地トス

一 線路用地
二 停車場、信號所及車庫、貨物庫等ノ建築ニ要スル土地
三 鐵道構内ニ職務上常住ヲ要スル鐵道員ノ舎宅及運輸保線ニ従事スル鐵道員ノ駐在所等ノ建築ニ要スル土地
四 鐵道ニ要スル車輛、器具ヲ修理製作スル工場及其ノ資材器具ヲ貯藏スル倉庫ノ建築ニ要スル線路ニ沿ヒタル土地

線路用地ノ幅員ハ築堤、切取、架橋等工事ノ必要ニ應シ工事方法書ニ依リ之ヲ定ム

第四十二條 道路、橋梁、河川、溝渠ニ關スル工事ノ施設ハ所管官廳ノ許可ヲ受クヘシ

第四十三條 線路ノ道路ヲ横斷スル場所ニハ橋梁ヲ架設シ又ハ地下道若クハ踏切道ヲ設クヘシ其ノ他危險防止ノ為必要ナル箇所ニハ牆柵、門戸、堤塘、溝渠ヲ設ケ又ハ番人ヲ配付スル等充分ノ設備ヲ為スコトヲ要ス

第四十四條 主務大臣ハ監査員ヲ派遣シ工事ヲ監視セシムルコトヲ得

工事カ工事方法書又ハ法令若クハ法令ニ基キテ發スル命令ニ違ヒタルトキハ主務大臣ハ其ノ改築ヲ命シ又ハ之ヲ停止スルコトヲ得

第四十五條 會社ハ主務大臣ニ申請シ其ノ許可ヲ得タル後ニ非サレハ運輸ヲ開始スルコトヲ得ス

第四十六條 運輸開始ノ申請アリタルトキハ主務大臣ハ監査員ヲ派遣シ鐵道ノ設備ヲ監査セシメ運輸ヲ開始スルニ適當ト認ムルトキハ其ノ許可ヲ與フヘシ若シ不適当ト認ムルトキハ其改良ヲ命シ其ノ竣功ノ後更ニ運輸開始ノ申請ヲ為サシムヘシ

第四十七條 前二條ノ規定ハ新設又ハ變更シタル建設物ヲ運輸ノ用ニ供スル場合ニ準用ス

第四十八條 主務大臣ハ監査員ヲ派遣シ鐵道ノ設備又ハ運輸保線ノ方法ヲ監査セシメ不適當ト認ムルトキハ何時ニテモ必要ナル施設ヲ命スルコトヲ得

前項ノ場合ニ於テ危險ナリト認ムルトキハ其ノ施設ヲ終ル迄運輸又ハ使用ヲ停止スルコトヲ得

第四十九條 第四十四條第二項第四十八條ノ規定ニヨリ改築又ハ必要ナル施設ヲ命セラレタル時ハ會社ハ之ヲ終リタル後主務大臣ニ申請シテ監査ヲ受クヘシ

第五十條 監査員ハ監査上必要ト認ムルトキハ取締役其ノ他會社ノ役員又ハ使用人ニ説明ヲ求メ及書類圖面ヲ檢閲スルコトヲ得

第五十一條 主務大臣ハ鐵道ノ設備カ運輸ノ必要ニ適セサルモノト認ムルトキハ之ニ適スヘキ設備ヲ命スルコトヲ得

第五十二條 主務大臣ハ公衆ノ安全ノ為官設鐵道ニ實施スル事物ヲ會社ニ命シテ施設セシメ其ノ他官設鐵道ニ實施スル規則ヲ私設鐵道ニ適用スルコトヲ得

第五十三條 政府又ハ政府ノ許可ヲ得タル者ニ於テ會社ノ鐵道ニ接續シ若ハ之ヲ横斷シテ鐵道ヲ敷設シ又ハ會社ノ鐵道線路ニ接近シ若ハ之ヲ横斷シテ道路、橋梁、溝渠若ハ運河ヲ造設スルトキハ會社ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス

前項ノ場合ニ於テ公益上必要ト認ムルトキハ主務大臣ハ會社ニ命シ接續横斷ノ場所ニ於ケル設備ヲ共用ニ供セシメ又ハ之ヲ變更セシムルコトヲ得

第五十四條 前條ノ場合ニ於テ設備ノ共用又ハ變更ニ要スル費用ノ負擔ニ付雙方ノ協議調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス

前項ノ裁定ハ終局トス

第五十五條 農工商業者カ其ノ産物、商品運送ノ為敷設スル鐵道ヲ會社ノ鐵道ニ接續セシムルコトヲ求メタルトキハ會社ハ正當ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス

前項ノ場合ニ於テ雙方ノ協議調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス

前項ノ裁定ハ終局トス

第五十六條 會社ハ運輸ニ關スル規定ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ之ヲ變更スルトキ亦同シ

第五十七條 會社ハ旅客及荷物ノ運賃ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ之ヲ變更スルトキ亦同シ

主務大臣ハ公益上必要ト認ムルトキハ運賃ノ變更ヲ命スルコトヲ得

運賃増加ノ公告ニハ認可ノ年月日ヲ記載スルコトヲ要ス

第五十八條 下等旅客運賃額ハ線路ノ距離一哩ニ付金二錢ノ割合ヲ超過スルコトヲ得ス但二哩未滿ノ哩數ニ對シテハ其ノ一人ノ運賃額ヲ金四錢迄ニ定ムルコトヲ得

本法ノ規定ニ依リ運賃ヲ半減スルトキ及哩數ニ應シテ運賃額ヲ定ムルトキ生スル厘位以下端數ヲ生スルトキハ之ヲ錢位ニ切上クルコトヲ得

第五十九條 會社ハ運賃ノ割引ニ付テハ豫メ一定ノ準則ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ之ヲ變更スルトキ亦同シ

準則ニ依ラサル運賃ノ割引ハ各場合ニ付認可ヲ受クベシ

第六十條 主務大臣ハ運賃ノ算法、荷物ノ等級、運賃表ノ様式及公告ノ方法等ニ關シ規定ヲ設クルコトヲ得

第六十一條 會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ鐵道運送ニ對シ何等ノ名義ヲ問ハス運賃以外ノ料金ヲ請求スルコトヲ得ス

第六十二條 會社ハ列車ノ發著時間及度數ヲ定メ主務大臣ノ定ムル規定ニヨリ認可ヲ受クヘシ之ヲ變更スルトキ亦同シ

主務大臣ハ公益上必要ト認ムルトキハ列車ノ種類、發著時間及度數ヲ定メ其ノ施行ヲ會社ニ命スルコトヲ得

第六十三條 主務大臣ハ會社ニ他ノ鐵道トノ連絡運輸又ハ直通運ヲ命スルコトヲ得

第六十四條 二箇以上ノ私設鐵道カ連絡運輸又ハ直通運輸ヲ為ス場合ニ於テ設備ノ変更、交互運輸ノ手續、運賃ノ割合其ノ他費用ノ負擔付会社間ノ協議調ハザルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス

前項ノ裁定ハ終局トス

官設鐵道ト私設鐵道ト連絡運輸又ハ直通運輸ヲ為ス場合ニ於テ協議調ハザルトキハ主務大臣之ヲ定ム

第六十五條 會社ハ主務大臣ノ定ムル規定ニ依リ事故ノ屆出ヲ為スヘシ

主務大臣ハ監査員ヲ派遣シ事故ノ審査ヲ行ハシムルコトヲ得

事故審査ノ為必要ト認ムルトキハ主務大臣ハ會社ニ命シ現状ヲ存置セシムルコトヲ得

監査員ハ取締役其ノ他ノ役員、使用人及關係人ヲ呼出、訊問シ其ノ他事故ノ審査ニ必要ナル審理手續ヲ為スコトヲ得

第六十六條 會社ハ營業年度毎ニ營業報告書ヲ調製シ定時總會後一週間内ニ主務大臣ニ差出スヘシ

第六十七條 會社ハ主務大臣ノ定ムル規定ニ依リ鐵道統計ヲ調製シ之ヲ差出スヘシ

第六十八條 鐵道事務ニ關シ往復スル吏員ニシテ監督官廳ヨリ發スル乗車證ヲ携帶スルモノハ無料ニテ乗車セシムヘシ

第六十九條 公務ヲ以テ往復スル陸海軍軍人、軍屬及警察官吏又ハ軍馬、銃砲、彈藥、糧食、被服、陣具、工鍬、兵器具、天幕等ニシテ公用タルコトヲ證スル通券アルモノハ半價ヲ以テ輸送スヘシ

第七十條 囚徒及監守官吏ハ半價ヲ以テ乗車セシムヘシ

第七十一條 會社ハ法令ノ定ムル所ニ依リ平時、戰時ニ於テ鐵道ヲ軍用ニ供スルノ義務ヲ負フ

第七十二條 政府ハ本免許状下付ノ日ヨリ満二十五箇年ノ後鐵道及附屬物件ヲ買上クルノ權ヲ保有ス

合併其ノ他ノ方法ニ依リ會社カ他會社ノ鐵道ヲ引受ケタルトキハ其ノ鐵道ニ對スル前項ノ期限ハ舊會社ニ本免許状ヲ下付シタル日ヨリ之ヲ起算ス

第七十三條 前條ニ依リ鐵道及附屬物件ヲ買上クルトキハ前五箇年間ノ株券價格ヲ平均シ之ヲ以テ買上價格ヲ定ム

前項ノ價格カ會社ニ於テ前五箇年間ニ株主ニ支拂ヒタル純益金ノ配當平均額ノ二十倍ノ金額ヲ超ユルトキハ該金額ヲ以テ買上價格ト為スヘシ

第七十四條 鐵道及附屬物件ノ状態不完全ナルトキハ其ノ補修ニ要スル費額ヲ前條ノ金額ヨリ控除シタルモノヲ以テ買上價格ト為スヘシ

前項補修ニ要スル費額ニ付協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ聴キ政府之ヲ定ム

鑑定人ノ選定ニ關スル規則ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

第七十五條 前三條ノ規定ハ法令又ハ免許、許可若クハ認可ニ附シタル條件ノ效力ヲ妨ケス

第七十六條 會社カ第三十九條ノ期限内ニ鐵道敷設工事ニ著手セス又ハ之ヲ竣功セサルトキハ免許ハ其ノ效ヲ失フ

第七十七條 會社カ第四十五條ノ規定ニ違反シテ運輸ヲ開始シ若ハ第四十七條ノ規定ニ違反シテ建設物ヲ運輸ノ用ニ供シ又ハ第四十八條第二項ノ停止ノ命令ニ違反シタルトキハ其ノ違反ノ行為ニ因リ得タル收入金ヲ没收ス收入金ト區別シ難キ他ノ收入アルトキハ併セテ之ヲ没收ス

第七十八條 會社カ法令ノ規定又ハ免許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ依リ命セラレタル施設ヲ為ササルトキハ政府ニ於テ之ヲ施行シ會社ヲシテ其ノ費用ヲ辨償セシムルコトヲ得

第七十九條 第七十七條ノ没收金及第七十八條ノ費用ハ監督官廳ニ於テ國税滞納處分ノ例ニ依リ之ヲ徴收ス但シ其ノ先取特權ハ公課ニ次キ之ヲ行フ

第八十條 會社カ法令ノ規定又ハ免許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ違反シ又ハ法令ニ基ヅキ發スル命令ヲ遵守セス其ノ他公益ヲ害スヘキ行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ左ノ處分ヲ為スコトヲ得

一 取締役其ノ他ノ役員ヲ解任スルコト
二 官設鐵道又ハ他ノ會社ヲシテ會社ノ計算ヲ以テ運輸ヲ為サシムルコト
三 免許ノ一部又ハ全部ヲ取リ消スコト

前項ノ規定ニ依リ解任セラレタル取締役其ノ他ノ役員ハ再任セラルルコトヲ得ス

第八十一條 免許ノ失效又ハ取消ノ場合ニ於テ主務大臣ハ其ノ鐵道及附屬物件ヲ公賣ニ付シ買受人ヲシテ之ヲ竣功セシムルコトヲ得

買受人ハ原免許ニ屬スル權利及義務ヲ承継ス但シ主務大臣ハ更ニ著手又ハ竣功ノ期限ヲ指定スルコトヲ得

二回ノ公賣ヲ行フモ買受人ナキトキハ鐵道及附屬物件ヲ個個ノ物件トシテ之ヲ處分セシム

公賣ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

第八十二條 鐵道延長免許ノ失效又ハ取消ニ因リ前條ノ公賣ヲ為ス場合ニ於テ鐵道ノ連絡上必要アルトキハ本線ノ免許ノ一部又ハ全部ヲ取消シ併セテ其ノ鐵道及附屬物件ヲ公賣ニ付スルコトヲ得

第八十三條 會社ハ免許ノ全部失效又ハ全部取消ニ因リテ解散ス其ノ本免許ノ申請ヲ却下セラレタルトキ亦同シ

第八十四條 假免許ヲ受ケスシテ会社設立ノ行為ヲ為シタル者又ハ免許ヲ受ケスシテ工事ニ著手シタル者ハ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス

第八十五條 事故審査ノ場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ現状存置ノ命令ニ違反シ又ハ呼出、訊問ニ應セス若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ五圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處ス

第八十六條 第四十五條ノ規定ニ違反シテ運輸ヲ開始シ若ハ第四十七條ノ規定ニ違反シテ建設物ヲ運輸ノ用ニ供シ又ハ第四十四條第二項第四十八條第二項ノ規定ニ依ル停止ノ命令ニ違反シタルトキハ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス

第八十七條 第十九條第二項第二十七條第五十條ノ場合ニ於テ呼出ニ應セス又ハ説明ヲ拒ミ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ五圓以上五百圓以下ノ科料ニ處ス

第八十八條 左ノ場合ニ於テハ發起人、取締役ヲ五圓以上五百圓以下ノ科料ニ處ス

一 本法ニ定メタル登記事項ノ登記ヲ怠リタルトキ
二 第七條、第二十九條第二項、第五十七條第三項ノ公告中ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ
三 鐵道臺帳ノ調製備置ヲ怠リ之ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ
四 本法ニ定メタル営業報告、統計書、事故其ノ他ノ屆出及法令ニ基ヅキテ監督官廳ノ命シタル報告屆出ノ呈出ヲ怠リ又ハ故意ニ不正ノ報告屆出ヲ為シタルトキ
五 法令ノ規定若ハ法令ニ基キテ發シタル命令又ハ免許、許可若クハ認可ニ附シタル條件ニ基ヅキテ發シタル命令ニ違反シタルトキ

第八十九條 左ノ場合ニ於テハ取締役ヲ十圓以上千圓以下ノ科料ニ處ス

一 本法ノ規定ニ依リ認可ヲ受クヘキ事項ニ關シ之ヲ受ケスシテ施行シタルトキ
二 第二十五條ノ規定ニ違反シ株式ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ之ヲ受ケタルトキ
三 第三十二條ノ規定ニ違反シテ配當ヲ為シタルトキ
四 本法ニ定メタル主務大臣ノ裁定ヲ遵守セサルトキ

第九十條 科料ノ徴収ニ關シテハ非訴訟事件手續法ヲ適用ス

補則

第九十一條 一個人又ハ一會社ニ於テ個人ノ専用ニ供スル為敷設スル鐵道ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

第九十二條 第十六條ニ定メタル期間ハ舊商法ノ規定ニ従ヒ會社ノ設立ヲ為ス場合ニハ免許ヲ受ケタル日ヨリ一箇年トス

第九十三條 第二十五條ノ規定ハ本法施行前ニ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ受ケタル株式ニ付テハ之ヲ適用セス

第九十四條 第三十一條ノ規定ハ本法施行前ニ生シタル債務ニ付テハ之ヲ適用セス

第九十五條 第三十三條ノ規定ハ本法施行前ニ設定シタル質權ノ效力ヲ妨ケス

第九十六條 第七十三條第二項、第七十四條ノ規定ハ本法施行前ニ免許ヲ受ケタル鐵道ニ付テハ會社ト協議ヲ經タル上ニ非サレハ之ヲ適用セス

第九十七條 私設鐵道株式會社ニハ本法施行ノ日ヨリ本法ニ特別ノ規定アルモノヲ除クノ外商法及其ノ附属法令中株式會社ニ關スル規定ヲ適用ス

第九十八條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

私設鐵道條例及明治二十八年法律第四號ハ之ヲ廢止ス

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。