商工經濟會法
朕帝國議會ノ協賛ヲ經タル商工經濟會法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
- 昭和十八年三月十一日
内閣總理大臣 東條 英機
大藏大臣 賀屋 興宜
商工大臣 岸 信介
内務大臣 湯澤 三千男
法律第五十二號
- 商工經濟會法
第一條 商工經濟會ハ國民經濟ノ總力ヲ最モ有效ニ發揮セシムル爲國策ニ協力シ産業經濟ノ圓滑ナル連絡ヲ圖ルト共ニ其ノ改善向上ニ務ムルコトヲ目的トス
本法ニ於テ産業經濟トハ第五條第一號ニ掲グル事業ニ關スル産業經濟ヲ謂フ
第二條 商工經濟會ハ法人トス
第三條 商工經濟會ノ地區ハ道府縣ノ區域ニ依ル
第四條 商工經濟會ハ其ノ目的ヲ達スル為左ニ掲グル事業ヲ行フ
一 當該地區内ニ於ケル産業經濟ニ關スル統制ニ對スル協力
二 當該地區内ニ於ケル産業經濟ノ運營又ハ整備ニ關スル連絡
三 當該地區内ニ於ケル産業經濟ノ改善向上ニ關スル施設
四 産業經濟ニ關スル調査及研究
五 前各號ニ掲グルモノノ外商工經濟會ノ目的ヲ建スルニ必要ナル事業
第五條 商工經濟會ノ會員タル資格ヲ有スル者ハ左ニ掲グル者ニシテ地方長官ノ指定スルモノトス
一 當該地區内ニ營業所、工場又ハ事業場ヲ有シ商業、交易業、工業、鍍業、金融業、電気事業、交通運輸業又ハ土木建築業ヲ營ム者
二 前號ニ掲グル事業ヲ鐙ム者ヲ以テ組織スル團體ニシテ當該地區内ニ営該地區内ニ事務所ヲ有スル者
三 前號ニ掲グル團體ノ外當該地區内ニ事務所ヲ有スル産業經濟ニ關スル團體
第六條 主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ニ依リ會員タル資格ヲ有スル者ニ對シ商工經濟会ノ設立ヲ命ズベシ
前項ノ規定ニ依ル設立ノ命令アリタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ創立總会ヲ開キ定款其ノ他商工經濟會ノ設立ニ必要ナル事項ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第一項ノ規定ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル者主務大臣ノ指定スル期限迄ニ設立ノ認可ヲ申請セザルトキハ主務大臣ハ定款ノ作成其ノ他設立ニ關シ必要ナル處分ヲ為スヨトヲ得
第七條 商工經濟會ノ定款ニハ左ニ掲グル事項ヲ記載スベシ
一 名稱
二 地區
三 事務所ノ所在地
四 會員ニ關スル規定
五 事業及其ノ執行ニ關スル規定
六 役員ニ關スル規定
七 會議ニ關スル規定
八 會計ニ關スル規定
九 支部ニ關スル規定
第八條 商工經濟會ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ設立ノ登記ヲ為スニ因リテ成立ス
第九條 商工經濟會成立シタルトキハ其ノ會員タル資格ヲ有スル者ハ總テ其ノ商工經濟會ノ會員トス
第十條 商工經濟會ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十一條 商工經濟會ハ其ノ名稱中ニ商工經濟會ナル文字ヲ用フベシ
商工經濟會又ハ商工經濟會ヲ以テ組織スル團體ニ非ザル者ハ其ノ名稱中ニ商工經濟會ナル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第十二條 商工經濟會ニハ左ノ役員ヲ置クベシ
會頭 一人
理事 若干人
監事 若干人
評議員 若干人
商工經濟會ニハ前項ノ役員ノ外定款ノ定ムル所ニ依リ副會頭二人以内又ハ理事長一人ヲ置クコトヲ得
第十三條 會頭ハ商工經濟會ヲ代表シ會務ヲ總理ス
副會頭ハ會頭ヲ輔佐シ豫メ會頭ノ定ムル順位ニ依リ會頭事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ會頭缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事長ハ會頭及副會頭ヲ輔佐シ會務ヲ掌理シ會頭及副會頭共ニ事故アルトキハ會頭ノ職務ヲ代理シ會頭、副會頭共ニ缺員ノトキハ會頭ノ職務ヲ行フ
理事ハ會頭、副會頭及理事長ヲ輔佐シ會務ヲ分掌シ豫メ會頭ノ定ムル順位ニ依リ會頭、副會頭及理事長共ニ事故アルトキハ會頭ノ職務ヲ代理シ會頭、副會頭及理事長共ニ缺員ノトキハ會頭ノ職務ヲ行フ
監事ハ商工經濟會ノ業務及財産ノ状況ヲ監査ス
評議員ハ會頭ノ諮問ニ對シ答申シ又ハ會頭ニ對シ意見ヲ具申ス
第十四條 會頭ハ會頭銓衝委員ノ推薦シタル者ノ中ヨリ地方長官ノ意見ヲ徴シ主務大臣之ヲ命ズ
前項ノ會頭銓衝委員ハ當該商工經濟會ノ地區内ニ於ケル産業經濟ニ關シ經驗アル者及學識アル者ノ中ヨリ地方長官之ヲ命ズ
副會頭、理事長及理事ハ當該商工經濟會ノ地區内ニ於ケル産業經濟ニ關シ経験アル者及學識アル者ノ中ヨリ地方長官ノ承認ヲ受ケ會頭之ヲ命ズ
監事ハ命令ノ定ムル所ニ依リ評議員之ヲ選任ス
評議員ハ評議員銓衝委員ノ推薦シタル者ノ中ヨリ會頭之ヲ命ズ
前項ノ評議員銓衝委員ハ會員及會員タル法人ノ業務ヲ執行スル役員ノ中ヨリ地方長官ノ承認ヲ受ケ會頭之ヲ命ズ
第十五條 商工經濟會ノ役員ノ任期ハ左ノ通トス
會頭 三年
副會頭 三年
理事長 三年
理事 三年
監事 二年
評議員 二年
會頭必要アリト認ムルトキハ任期中ト雖モ地方長官ノ承認ヲ受ケ副會頭、理事長又ハ理事ヲ解任スルコトヲ得
第十六條 商工經濟會ニ總會ヲ置ク
通常總會ハ毎年一囘會頭之ヲ招集ス
會頭必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ臨時總會ヲ招集スルコトヲ得
第十七條 左ニ掲グル事項ハ總會ノ議決ヲ經ベシ
一 定款ノ變更
二 収支豫算
三 第二十四條ノ規定二依ル賦課金ノ賦課徴収方法
四 其ノ他命令ヲ以テ定ムル事項
第十八條 會員ハ總會ニ於テ各一個ノ議決権ヲ有ス但シ第五條第二號ノ會員ニ付テハ定款ノ定ムル所ニ依リ一人ニ付十個ヲ超エザル範圍内ニ於テ二個以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ得
第十九條 總會ノ議長ハ會頭ヲ以テ之ニ充ツ
第二十條 總會ハ會員三分ノ一以上出席スルニ非ザレバ之ヲ開クコトヲ得ズ
總會ノ議決ハ出席者ノ議決權ノ過半数ニ依リ可否同数ナルトキハ議長之ヲ決ス
定款ノ變更ノ議決ハ會員ノ半数以上出席シ出席者ノ議決権ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ鴛ス
會員ハ代理人ヲ以テ議決權ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席ト看做ス
前項ノ代理人ノ資格其ノ他代理人ニ關スル事項ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第二十一條 商工經濟會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ總會ニ代ルベキ總代會ヲ設クルコトヲ得
前五條ノ規定ハ前項ノ總代會ニ之ヲ準用ス
第二十二條 商工經濟會ハ産業經濟ニ關スル事項ニ付行政官廳ニ建議スルコトヲ得
商工經濟會ハ行政官廳ノ諮問ニ對シ答申スベシ
第二十三條 商工經濟會ハ共ノ會員及會員タル團體ヲ組織スル者ニ對シ産業經濟ニ關スル事項ノ調査ヲ為ス為必要ナル資料ノ提出ヲ求ムルコトヲ得
第二十四條 商工經濟會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ共ノ會員ニ對シ経費ヲ賦課スルコトヲ得
第二十五條 商工經濟會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款ニ違反シタル會員ニ對シ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第二十六條 第二十四條ノ規定ニ依ル賦課金又ハ過怠金ヲ滞納スル者アル場合ニ於テ商工經濟會ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ商工經濟會ハ其ノ徴収金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スベシ
前項中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノトス
第一項ノ規定ニ依ル徴収金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徴収金ニ次ギ其ノ時效ニ付テハ市町村税ノ例ニ依ル
第二十七條 商工經濟會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ使用料及手数料ヲ徴収スルコトヲ得
前項ノ使用料及手數料ノ徴収ニ關シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第二十八條 商工經濟會ハ其ノ地區内ノ必要ナル地ニ支部ヲ置キ其ノ事業ノ一部ヲ分掌セシムルコトヲ得
第二十九條 商工經濟會ノ支部ニ支部長ヲ置キ必要ニ應ジ参與ヲ置ク
支部長ハ支部ノ事務ヲ掌理ス
参與ハ支部ノ事務ニ参與ス
支部長ハ商工經濟會ノ監事以外ノ役員中ヨリ地方長官ノ承認ヲ受ケ會頭之ヲ命ズ
参與ハ會頭ノ承認ヲ受ケ支部長之ヲ命ズ
第三十條 定款ノ變更、収支豫算及第二十四條ノ規定ニ依ル賦課金ノ賦課徴収方法ハ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第三十一條 行政官廳ハ商工經濟會ニ封シ彦業經濟ニ關スル事項ノ調査ヲ命ズルコトヲ得
第三十二條 行政官廳當該地區内ニ於ケル産業經濟ノ統制運營上必要アリト認ムルトキハ商工經濟會ニ封シ必要ナル事業ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ變更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第三十三條 行政官廳ハ商工經濟會ニ對シ業務及會計二關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ為スコトヲ得
行政官廳必要アリト認ムルトキハ監事ヲシテ監査ノ結果ヲ報告セシムルコトヲ得
第三十四條 行政官廳必要アリト認ムルトキハ商工經濟會ヨリ其ノ事業ニ關シ報告ヲ徴シ又ハ商工經濟會ノ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査スルコトヲ得
第三十五條 總會若ハ總代會ノ議決又ハ役員ノ行為ガ法令若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ行政官廳ハ總會若ハ總代會ノ議決ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第三十六條 商工經濟會ハ主務大臣ノ命令ニ因リテ解散ス
第三十七條 商工經濟會ノ解散及淸算ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條 本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキハ會頭、副會頭、理事長又ハ理事ヲ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十九條 第十一條第二項ノ規定ニ違反シ名稱中ニ商工經濟會ナル文字ヲ用ヒタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第四十條 樺太ニ於テ本法ヲ適用スルニ付必要ナル事項ニ關シテハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
附則
第四十一條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十二條 商工會議所法ハ之ヲ廃止ス
第四十三條 商工會議所法ニ依リ設立セラレ本法施行ノ際現ニ存スル商工會議所ハ本法施行後ト雖モ仍存續スルモノトス
前項ノ商工會議所ニハ商工會議所法ノ規定ヲ適用ス
第四十四條 前條第一項ノ商工會議所ハ其ノ地區ノ屬スル道府縣ニ於テ商工經濟會成立シタル時解散スルモノトシ其ノ權利義務ハ當該商工經濟會之ヲ承繼ス此ノ場合ニ於テハ商工會議所法中淸算二關スル規定ハ之ヲ適用セズ
第四十五條 商工會議所法ニ依ル日本商商工會議所ハ本法施行ノ日ニ於テ解散ス此ノ場合ニ於ケル淸算ニ付テハ商工會議所法中淸算ニ關スル規定ヲ適用ス
第四十六條 商工經濟會ガ第四十四條ノ規定ニ依リ承繼シタル不動産ニ關スル權利ノ取得ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ登録税ノ額ハ不動産ノ價格ノ千分ノ三トス但シ登録税法ニ依リ算出シタル登録税ノ額ガ本條ノ規定ニ依リ算出シタル税額ヨリ少キトキハ其ノ額ニ依ル
第四十七條 本法施行ノ際現ニ商工經濟會ノ名稱ヲ使用スル者ハ本法施行後六月以内ニ其ノ名稱ヲ變更スルコトヲ要ス
第三十九條ノ規定ハ前項ノ期間内之ヲ前項ニ掲グル者ニ適用セズ
第四十八條 商工經濟會成立ノ際商工會議所法ニ依ル異議ノ申立ニシテ現ニ申立中ノモノ又ハ申立期間滿了セザルモノ、同法ニ依ル賦課金又ハ過怠金ニシテ現ニ滞納セルモノ等ノ處理ニ關シ必要アル場合ニ於テハ勅令ヲ以テ必要ナル定ヲ為スコトヲ得
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。