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仏説阿弥陀経 (昭和新纂経典部)

佛說ぶつせつ阿彌陀あみだきやう

姚秦えうしん三藏さんざうほつ鳩摩羅くもらじふ みことのりほうじてやく


 [1]かくごときをわれきき。いちほとけしやこく[2]じゆぎつ獨園どくをん[3]ましまして、だい比丘びくしゆせんひやくじふにんともなりき。みなだい阿羅あらかんなり、しゆしきせられたり。長老ちやうらうしやほつ摩訶まか目犍連もつけんれん摩訶まかせふ摩訶まか旃延せんねん[4]摩訶まか俱絺羅くちら[5]離婆多りはだしゆはん陀伽だかなん[6]なん羅睺羅らごら憍梵けうぼんだいびん盧頗羅墮るはらだ迦留陀夷かるだい摩訶まかこふひん薄拘羅はくら阿㝹樓駄あぬるだ[7]かくごととうもろもろだい弟子でしなり。ならびもろもろさつ摩訶まかさつり、文殊もんじゆ師利しりほふわういつさつけん陀訶だかだいさつじやう精進しやうじんさつかくごととうもろもろだいさつおよしやくだいくわんいんとうりやう諸天しよてん大衆だいしゆともなりき。

 [8]爾時しかのときほとけ長老ちやうらうしやほつげたまはく、『これより西方さいはう十萬億じふまんのくぶつぎてかいり、なづけて極樂ごくらくふ。そのほとけまします、阿彌陀あみだなづけたてまつる。いまげんましまして說法せつぽふしたまふ。しやほつかのなんゆゑなづけて極樂ごくらくる。其國そのくに衆生しゆじやうもろもろることく、ただもろもろらくのみをく、ゆゑ極樂ごくらくなづく。

 [9]またしやほつ極樂ごくらくこくには七重しちぢう欄楯らんじゆん七重しちぢうまうある七重しちぢう行樹がうじゆあり。みなはうをもつて周匝しゆさふねうせり。是故このゆゑ彼國かのくになづけて極樂ごくらくふ。

 [10]またしやほつ極樂ごくらくこくには七寶しつぱういけり。はつどくすゐ其中そのなか充滿じうまんせり。いけそこにはもつぱ金沙こんしやもつけり。へん階道かいだうり、金銀こんごん瑠璃るり玻瓈はりをもつて合成がふじやうせり。ほとり樓閣ろうかくり、また金銀こんごん瑠璃るり玻瓈はりしや赤珠しやくしゆなうもつしかこれ嚴飾ごんじきせり。いけなかれんあり、おほいさ車輪しやりんごとし、靑色しやうしきには靑光しやうくわうあり、黃色わうしきには黃光わうくわうあり、赤色しやくしきには赤光しやつくわうあり、白色びやくしきには白光びやつくわうあり、めう香潔かうけつなり。 しやほつ極樂ごくらつこくにはかくごときのどく莊嚴しやうごん成就じやうじゆせり。

 [11]またしやほつかのほとけこくにはつね天樂てんがくす。黃金わうごんり。ちうろく まん陀羅華だらけあめふらす。其國そのくに衆生しゆじやうつね淸旦しやうたんもつて、おのおのこくもつもろもろめうもつて、はう十萬億じふまんのくほとけやうす。すなはじきを以てかへつて本國ほんごくいたつて飯食ぼんじき經行きやうぎやうす。しやほつ極樂ごくらつこくにはかくごときのどく莊嚴しやうごん成就じやうじゆせり。

 [12]復次またつぎしやほつ彼國かのくににはつね種種しゆじゆめうなる雜色ざつしきとりり、 白鵠びやつこくじやくあうしやりようびんみやうとりなり。このもろもろとりちうろく和雅わげこゑいだす、其音そのこゑこんりき[13]しちだいぶんはつ聖道しやうだうぶんかくごととうほふ演暢えんちやうす。その衆生しゆじやう是音このこゑおはつて、みなことごとほとけねんほふねんそうねん[14]しやほつなんぢ此鳥このとりじつ罪報ざいはう所生しよしやうなりとおもなかれ。所以ゆゑんいかん。かのほとけこくには三惡趣さんなくしゆし。しやほつそのほとけこくにはなほ三惡道さんなくだうし、いかいはんやじつらんや。このもろもろとりみな阿彌陀あみだぶつ法音ほふおんせんせしめんとほつしてへんしてところなり。しやほつかのほとけこくにはふういて、もろもろ寶行樹はうがうじゆおよはうまううごかして、めうこゑいだせり。たとへばひやく千種せんしゆがくどうともすがごとし。是音このこゑものみなねん念佛ねんぶつ念法ねんぼふ念僧ねんそうしんしやうず。しやほつそのほとけこくにはかくごときのどく莊嚴しやうごん成就じやうじゆせり。

 [15]しやほつなんぢこころおいいかん、かのほとけなんゆゑ阿彌陀あみだなづけたてまつる。しやほつかのほとけ光明こうみやうりやうにして、十方じつぱうくにてらすにしやうするところ[16]是故このゆゑなづけて阿彌陀あみだす。またしやほつかのほとけ壽命じゆみやうおよ其人民そのにんみんりやうへんそうこふなり[17]ゆゑ阿彌陀あみだなづく。しやほつ阿彌陀あみだぶつ成佛じやうぶつより已來このかたいまおい十劫じつこふなり。またしやほつかのほとけりやうへん聲聞しやうもん弟子でしり、みな阿羅あらかんなり、これ算數さんじゆところあらず。もろもろさつまたかくの如し。しやほつかのほとけこくにはかくごときのどく莊嚴しやうごん成就じやうじゆせり。

 [18]またしやほつ極樂ごくらつこくには衆生しゆじやうしやうずるものみな阿鞞あびばつ[19]なり。其中そのなかおほ一生いつしやうしより。其數そのかずはなはおほし、算數さんじゆところあらず、ただりやうへんそうこふもつくべし。

 [20]しやほつ衆生しゆじやうかんもの應當まさ發願ほつぐわんして彼國かのくにしやうぜんとがんずべし。所以ゆゑんいかん。かくごときのもろもろ上善人じやうぜんにんとも一處いつしよすることをればなり。しやほつせう善根ぜんごん福德ふくとく因緣いんねんもつ彼國かのくにしやうずることをべからず[21]

 [22]しやほつ善男ぜんなん善女人ぜんによにんつて、阿彌陀あみだぶつくをいて 名號みやうがうしふすること、もし一日いちにちもしにちもし三日さんにちもしにちもしにちもし六日ろくにちもし七日しちにち一心いつしんらんなれば、其人そのひと命終みやうじうときのぞんで、阿彌陀あみだぶつもろもろ聖衆しやうじゆともげん其前そのまへまします。是人このひとおはときこころ顚倒てんだうせず、すなは阿彌陀あみだぶつ極樂ごくらつこく往生わうじやうすることをしやほつわれこの[23]るがゆゑこのことばく。衆生しゆじやうつて是說このせつかんもの應當まさ發願ほつぐわんしてかのこくしやうずべし。

 [24]しやほつ我今われいま阿彌陀あみだぶつ不可思議ふかしぎどく讚歎さんだんするがごとく、東方とうばうまたしゆくぶつしゆさうぶつだいしゆぶつしゆくわうぶつ妙音佛めうおんぶつまします。かくごととうごう沙數しやしゆ諸佛しよぶつおのおの其國そのくにおい廣長くわうぢやう舌相ぜつさう[25]いだして、あまね三千さんぜんだいせんかいおほうて誠實じやうじつことばきたまふ。なんぢ衆生しゆじやうまさこの稱讚しようさん不可思議ふかしぎどく一切いつさい諸佛しよぶつしよねんきやうしんずべし。

 [26]しやほつ南方なんぱうかい日月にちぐわつ燈佛とうぶつみやうもんくわうぶつ大焰だいえん肩佛けんぶつしゆ燈佛とうぶつりやう精進しやうじんぶつまします。かくごととうごう沙數しやしゆ諸佛しよぶつおのおの其國そのくにおい廣長くわうぢやう舌相ぜつさういだして、あまね三千さんぜん大千だいせんかいおほうて誠實じやうじつことばきたまふ。なんぢ衆生しゆじやうまさこの稱讚しようさん不可思議ふかしぎどく一切いつさい諸佛しよぶつしよねんきやうしんずべし。

 [27]しやほつ西方さいはうかいりやう壽佛じゆぶつりやう相佛さうぶつりやう幢佛どうぶつ大光佛だいくわうぶつ大明佛だいみやうぶつ寶相佛はうさうぶつ淨光じやうくわうぶつまします。如是かくごととうごう沙數しやしゆ諸佛しよぶつおのおの其國そのくにおい廣長くわうぢやう舌相ぜつさういだして、あまね三千さんぜん大千だいせんかいおほうて誠實じやうじつことばきたまふ。なんぢ衆生しゆじやうまさこの稱讚しようさん不可思議ふかしぎどく一切いつさい諸佛しよぶつしょねんきやうしんずべし。

 [28]しやほつ北方ほつぱうかい焰肩佛えんけんぶつさいしようおんぶつなんぶつにつしやうぶつまうみやうぶつまします。かくごととうごう沙數しやしゆ諸佛しよぶつおのおの其國そのくにおい廣長くわうぢやう舌相ぜつさういだして、あまね三千さんぜん大千だいせんかいおほうて誠實じやうじつことばきたまふ。なんぢ衆生しゆじやうまさこの稱讚しようさん不可思議ふかしぎどく一切いつさい諸佛しよぶつしょねんきやうしんずべし。

 [29]しやほつはうかい師子ししぶつ名聞みやうもんぶつ名光みやうくわうぶつだつぶつ法幢ほふどうぶつほふぶつまします。かくごととうごう沙數しやしゆ諸佛しよぶつおのおの其國そのくにおい廣長くわうぢやう舌相ぜつさういだして、あまね三千さんぜん大千だいせんかいおほうて誠實じやうじつことばきたまふ。なんぢ衆生しゆじやうまさこの稱讚しようさん不可思議ふかしぎどく一切いつさい諸佛しよぶつしょねんきやうしんずべし。

 [30]しやほつ上方じやうはうかい梵音ぼんのんぶつ宿王しゆくわうぶつ香上かうじやうぶつ香光かうくわうぶつだい焰肩えんけんぶつ雜色ざつしきほう嚴身ごんしんぶつしやじゆわうぶつほうとくぶつけん一切いつさいぶつによしゆせんぶつまします。かくごととうごう沙數しやしゆ諸佛しよぶつおのおの其國そのくにおい廣長くわうぢやう舌相ぜつさういだして、あまね三千さんぜん大千だいせんかいおほうて誠實じやうじつことばきたまふ。なんぢ衆生しゆじやうまさこの稱讚しようさん不可思議ふかしぎどく一切いつさい諸佛しよぶつしょねんきやうしんずべし。

 [31]しやほつなんぢこころおい云何いかんなにゆゑなづけて一切いつさい諸佛しよぶつしよねんきやうる。しやほつ善男ぜんなん善女人ぜんによにんつて、この諸佛しよぶつ所說しよせつみなおよきやうかんものは、このもろもろ善男ぜんなん善女人ぜんによにんみな一切いつさい諸佛しよぶつためともねんせられて、みなのく多羅たら三藐さんみやく三菩提さんぼだい退轉たいてんせざることを是故このゆゑしやほつなんぢ皆當みなまさわがおよ諸佛しよぶつ所說しよせつ信受しんじゆすべし。しやほつひとつてすで發願ほつぐわんし、いま發願ほつぐわんし、まさ發願ほつぐわんし、阿彌陀あみだぶつこくしやうぜんとほつせんものは、この諸人しよにんとうみなのく三藐さんみやく三菩提さんぼだい退轉たいてんせざることをて、かのこくおいもしすでしやうじ、もしいましやうじ、もしまさしやうぜん。是故このゆゑしやほつもろもろ善男ぜんなん善女人ぜんによにんしんずることらんものは、應當まさ發願ほつぐわんしてかのこくしやうずべし。

 [32]しやほつ我今われいま諸佛しよぶつ不可思議ふかしぎどく稱讚しようさんするがごとく、かの諸佛しよぶつとうまたわが不可思議ふかしぎどく稱說しようせつして、このことばしたまはく、『しや迦牟尼かむにぶつ甚難じんなん希有けうことして、しやこくぢよくあく劫濁こふぢよく見濁けんぢよく煩惱濁ぼんなうぢよく衆生濁しゆじやうぢよく命濁みやうぢよくなかおいのく三藐さんみやく三菩提さんぼだいて、もろもろ衆生しゆじやうためこの一切いつさいけん難信なんしんほふく。しやほつまさるべし、われ五濁ごぢよく惡世あくせおいこのなんぎやうしてのく三藐さんみやく三菩提さんぼだいて、一切いつさい世間せけんためこの難信なんしんほふく。これ甚難じんなんす。』ほとけこのきやうおはりたまふに、しやほつおよもろもろ比丘びく一切いつさいけん天人てんにんしゆとうほとけ所說しよせつたてまつつて、歡喜くわんぎ信受しんじゆしてらいしてりきぬ。


佛說阿彌陀經 畢

注釈部

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  1. 【一】第一大段、序分。
  2. 【舍衞國】拘薩羅國の都城。
  3. 【祇樹給孤獨園】舍衞國の南一里の處。
  4. 【摩訶迦旃延】佛十大弟子の一、論議第一。
  5. 【摩訶俱絺羅】佛十大弟子の一、問答第一
  6. 【難陀】佛十大弟子の一、諸根調伏第一。
  7. 【阿㝹樓駄】佛十大弟子の一、天眼第一。
  8. 【二】第二大段、正宗分、初に略して淨土を明す。
  9. 【三】次に廣く淨土を明す中、初に依報莊嚴を明す、第一に寶行樹。
  10. 【四】次に寶池樓閣蓮華。
  11. 【五】三に天樂、金地、雨華、供佛經行(行道のこと)。
  12. 【六】四に化鳥演法、風樹作樂。
  13. 【五根】進、信、念、定、慧。五力とは五根を惡むを排斥する意。
  14. 【佛を念じ等】化鳥妙法を傳へ人の勝心を發し、三寶の芳名を念じ百生の障累を消す。
  15. 【七】以下正報に就いて莊嚴を明す、初に化主の功德。
  16. 【彼佛の光明等】彌陀を無量光、卽ち光明に約して名を得。
  17. 【彼佛の壽命等】彌陀を無量壽、卽ち壽命に約して名を得。
  18. 【八】別して菩薩の所得を明す。
  19. 【阿鞞跋致】不退轉と譯す。
  20. 【九】以下衆生を勸めて念佛往生せしむるを明す。
  21. 【少善根】雜善を簡び念佛の行を明す。
  22. 【一〇】念佛行を修すべきを勸む。
  23. 【是利】釋尊の選擇念佛。
  24. 【一一】以下六方段東方世界。
  25. 【廣長の舌相】不虛妄の相。
  26. 【一二】南方世界。
  27. 【一三】西方世界。
  28. 【一四】北方世界。
  29. 【一五】下方世界。
  30. 【一六】上方世界。
  31. 【一七】經名に約して三世の利益を顯す。
  32. 【一八】諸佛釋尊を讃歎す。

関連項目

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この著作物は、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)70年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


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