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山 下 幸 內 上 書

山 下 幸 內 著


恐奉言上

恭白、天下の武將と備らせ給ふ御大將は、古より悉く奉將器、判(斷カ)の明衡を以、名將愚將の堺を明らかに記錄して、武門の家には留たり、末世の鑑となし、尤異國へも事に振れては渡り候なれば、至て御身持御政道御耻ケ敷御事に御座候、然に權現樣已來、珍敷も當將軍樣自然と御名將に御機備らせられ、先以て天下の萬民歡の色をなすは此節に御座候、依之乍恐一書を奉献上、猶當時の世上風聞を詳に奉言上、御心得の端にも罷成候へば、少しの儀にても一天下の闇に成候御事に御座候、尤隱し御目付等數多御出し被遊、世上の風聞上聞に達候と、是又風聞仕候得共、有の儘には不申上候歟、又は面々の身を大切にかため候心故に、細事は御目付衆も不存候と相見へ申候、恐多き申事に御座候得共、下拙申上候趣は一度御聞にだに奉達候得ば、天然自然の道理を以天下國家の御爲とは罷成候事、具に御感味可遊候