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に暇あらざるに予と婦は急ぎ奔りて門外に逃れ、一草房中に遁れしに、房中は悉く村間の婦女であつて、予が婦のみを留めて予を郤けたのである。予は急いで南首の草房中に奔つた。その草堆積して屋に連つてゐた。〈屋根裏に届いていたとの意〉予はその巓に登り首を俯して伏し匿れ復た亂草を以て其の上に置いた。自ら以爲らく患ひなしと。須臾に一卒が有つて一躍して上り來り、長矛を以てその下を搠つたので、予は草間より出でて命を乞ひ、復た献ずるに金を以てした。卒草中を搜りて更に數人を得たのであつたが、皆献ずる處があつて免れた。兵旣に去て數人亦草間に潜入した。予はその中を窺ひたるに方卓數張あつて外圍は皆草でその內廓然として虛しく、二三十人を容るべきであつた。予强いてその內に這入つて自ら計を得たりとおもふた。意はざりき敗垣半腰より忽ちくづれ、一穴の中外洞然として已に兵の爲に窺ひ見る所とならむとは、兵は乃ち穴外より長矛を以て直に刺したので、其の前に當るものは大創を被らざる無く、予が股も亦傷ついた。而も前なる者は悉く倒れけて出た。予は復た婦の所に至るに、婦は衆婦と