めておいでになりました。
さうかうするうちに三年ばかりたちました。その年の春先から、赫映姬は、どうしたわけだか、月のよい晚になると、その月を眺めて悲しむようになりました。それがだん〳〵つのつて、七月の十五夜などには泣いてばかりゐました。翁たちが心配して、月を見ることを止めるようにと諭しましたけれども、
「月を見ずにはゐられませぬ」
といつて、やはり月の出る時分になると、わざ〳〵緣先などへ出て歎きます。翁にはそれが不思議でもあり、心がゝりでもありますので、ある時、そのわけを聞きますと、
「今までに、度々お話しようと思ひましたが、御心配をかけるのもどうかと思つて、打ち明けることが出來ませんでした。實を申しますと、私はこの國の人間ではありません。月の都の者でございます。ある因緣があつて、この世界に來てゐるのですが、今は歸らねばならぬ時になりました。この八月の十五夜に迎への人たちが來れば、お別れして私は天上