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(九)
無理數の加法論法の說明

前節に說きたる如き,又は一般に無理數につきて上文用ゐ來れる論法は,往々,此種の抽象的の思索に慣れざる人の,理會に苦しむ所なり.而して困難は常に推理の進行の步々追跡し難きにあらずして,却て大體に於て斯の如き三段論法の連鎖の嚮ふ所の那邊に在るかの明ならざるに存せり.例へば始めて幾何學の敎課を受くる兒童の如し,凡て直角の相等しきことは彼等の熟知する所なり.何故に故らに某公理,某定理を或順序に連結したる後始めて之を知り得たりと言ふか.疑問は立脚點の不明より起る.

凡て二つの數に一定の和あり,其和が前章(九)の諸原則に背馳せざること,吾輩のよく知る所なり.吾輩豈に明白斯の如き事實を疑はんや.吾輩は今斯の如く明白にして,斯の如く各人の其所觀を一にする事實の根據の何處にあるかを探らんと欲する者なり.

なる二數が十進命數法にて表はされたりとし(