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(一)
問題の說明

加法及乘法の轉倒卽減法及除法は自然數の範圍內に於て必しも可能ならず.原則三は轉倒の可能なる場合に於ては其結果唯一なるべきを言へるに過ぎず.此制限を除かんと欲せば數の範圍を擴張して自然數以外新種の數を作り出さざるを得ず.是に於て一個の問題を生ず,自然數の範圍を擴張して減法及除法を汎通ならしめ,而も數の新範圍に於て上述の諸原則を盡く成立せしめんとすといふこと是なり.此問題は二樣の要求を含めり.其一は減法及除法を凡通ならしめんが爲に新しき數を作らんとするにあり.此要求は甚空漠にして寬大なり.之に應ずるに於て吾人は何等の覊絆をも受くることなし. より小なる場合に於ける 又は の倍數ならざる場合に於ける は吾人の意に任じて其意義を定め,形式上減法及除法を汎通ならしむることを得.然れども斯の如く全く隨意に減法除法の結果を定むることの效益果して如何.

算法適用の區域に制限あるは自然なり.强て此制限を撤去せんとする動因は