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 以上の如き决議事項の內最重要なるものは蓋し大西洋黑海連絡鐵道の完成なるべし、思ふにバルカン半島を手中に收め小亞細亞を貫通して波斯灣に達するの大帝國を建設する事は戰前に於ける獨逸が世界政策の一大理想にして所謂伯林バグダツド鐵道なるものは實に此理想を實現せんとする骨子なりし也、今や此鐵道は獨逸が敗北の結果英國の掌裡に歸し伯林バグダツドの計畫は政治的にも經濟的にも挫折したるの觀あれど尙獨逸がバルカン半島に優越の地位を占めむとするの危險は必しも除却せられたるに非ず、已に此危險にして存する以上歐洲の平和は未だ大磐石の基礎の上に築かれたりと云ふを得ざるが故に苟も永遠の平和を確立せむと欲せば獨逸の此地方に