Page:Sengo ōbei kenbunroku.pdf/162

提供:Wikisource
このページは検証済みです

を受けて飜然大悟すると共に物質に於て失ひしものを心靈に於て償はんとし斷乎として從來の針路を捨て精神的向上の途を辿るに至るや否やは蓋し大なる疑問とせざるを得ず、聞く如くんば獨逸に於ても戰爭中所謂成金なるもの簇出せしが彼等の多くは折角出來たる金も國內の不安と聯合國に對する莫大なる負擔の爲に將來はどうなるや知れざれば今の內に思ふ存分使ふに如かずと云ふ如き自暴自棄に陷れるものゝ如く現に余もかゝる有樣を實見したること屢々あり、一般市民がいかにも見すぼらしき粗服を纒ひ意氣消沈せるに反し彼の成金輩は生粹のパリジヤンも尙ほ及ばざるが如き裝をなしてカフエー等に陣取り盛んに三鞭酒を拔きつゝ泥醉し居るなり、余は獨逸