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Page:Ruling on eugenics law osaka1.pdf/20

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能性がもたらす心理的・経済的コストを負担し続けることによって国家の善きあり方を構想しその実現を図る自由を妨げられることのない利益」と言い直すことができるであろう(以下、この利益を「善き国家の構想・実現を妨げられない利益」という。)。思うに、善き国家の構想・実現を妨げられない利益を保障することは、確かに正当な立法目的であるとはいえるものの、上記に述べた心理的・経済的コストは国家の受益者でもあるところの現在及び将来の国民によって分散して負担されることに鑑みるならば、問題となっている損害の賠償が国家の財政に回復し難いほどの負担をもたらす等の特段の事情がある場合は格別、そうでない限り、上記の可能性が存続することによって国が国家の善きあり方を構想しその実現を図る自由を妨げられることになるとは考え難く、本件においても、上記特段の事情は見出し得ない。

(3) 以上に対して、証拠確保の困難性を免れ得る利益は国民一般の福利に及ぶものであるから、同利益は国家賠償請求訴訟においても均しく保障されるべきであることは疑いを入れない。しかしながら、本件においては、国会議員の立法行為という公開の場での活動が不法行為を構成しているのであるから、たとえそれが行われたのが半世紀以上前のことであるとしても証拠の確保が困難となる事態に至っているとは考え難い。

3 改正前民法724条の立法趣旨に照らして考える限り本件請求権が除斥期間の経過によって消滅したとすることに積極的意義を見出し得ないことは、以上の考察によって十分に示し得たのではないであろうか。しかしながら、同条の立法趣旨についての考察が本意見に及ぼすものは以上の諸点に尽きるわけではない。という のは、同条の立法趣旨の一つであるところの善き国家の構想・実現を妨げられない利益の保障という点は、本件において上告人が除斥期間の主張をすることが信義則に反し、権利の濫用として許されないと解すべきことの積極的根拠をも提供するものだからである。以下、この点を詳らかにする。