相当である(前掲令和6年大法廷判決参照)。
イ(ア) 改正前民法724条は、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図した規定であると解されるところ、上記アのとおり、立法という国権行為、それも国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白であるものによって国民が重大な被害を受けた本件においては、法律関係を安定させることによって関係者の利益を保護すべき要請は大きく後退せざるを得ないというべきであるし、国会議員の立法行為という加害行為の性質上、時の経過とともに証拠の散逸等によって当該行為の内容や違法性の有無等についての加害者側の立証活動が困難になるともいえない。そうすると、本件には、同条の趣旨が妥当しない面があるというべきである。
(イ) その上で、被上告人は、上記アのとおり憲法13条及び14条1項に違反する本件規定に基づいて、昭和23年から平成8年までの約48年もの長期間にわたり、国家の政策として、正当な理由に基づかずに特定の疾病や障害を有する者等を差別してこれらの者に重大な犠牲を求める施策を実施してきたものである。さらに、被上告人は、その実施に当たり、審査を要件とする優生手術を行う際には身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合がある旨の昭和28年次官通知を各都道府県知事宛てに発出するなどして、優生手術を行うことを積極的に推進していた。そして、上記施策が実施された結果として、少なくとも約2万5000人もの多数の者が本件規定に基づいて不妊手術を受け、これにより生殖能力を喪失するという重大な被害を受けるに至ったというのである。これらの点に鑑みると、本件規定の立法行為に係る被上告人の責任は極めて重大であるといわざるを得ない。
また、法律は、国権の最高機関であって国の唯一の立法機関である国会が制定するものであるから、法律の規定は憲法に適合しているとの推測を強く国民に与える上、本件規定により行われる不妊手術の主たる対象者が特定の疾病や障害を有する者であり、その多くが権利行使について種々の制約のある立場にあったと考えられ