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 〔乙2〕の司法警察員に対する昭和二四年八月八日付および検察官に対する同月三一日付各供述調書、前記実況見分調書、前記検視調書の各記載、原一審証人〔乙〕、同〔丙11〕、原一審および原二審証人〔乙2〕の各供述記載ならびに前記原一、二審検証調書の各記載によれば、次のとおり認められる。

⑴ 〔乙2〕は眠りについてから一時間位した頃に、ふと目が覚めると、白い開襟シヤツらしいものを着た若い男が、被害者の右肩から右腹部までの間で、しかも同女の敷布団の縁のあたりにしやがみ、身体全体はやや同女の顔の方を向いている恰好で、前屈みになり、同女を覗きみるようにしている姿が目に入つた。そのとき、被害者の頭は普段のとおりに枕の上にあつて左肩は枕の下になつており、顔はやや左側を向き、左手の二の腕は掛布団の上で肘関節から曲げて腹の中程におかれ、異常な姿勢ではなかつた(なお、当時被害者はズロースを穿き、腹巻を締め、素肌の上に浴衣地の寝巻を着ているのである。)。
  〔乙2〕は男の姿が目に入ると同時位に、男の右手が動いているように感じたが、咄嗟に飛び起き「〔甲〕」と一回叫ぶと同時に、男は蚊帳をまくり、引き戸から外へ逃げて行つた。
⑵ 縁側の引き戸のうち東側から二枚目の戸が、約三六・三六センチメートル位開いていて、〔乙2〕はそのあたりまで行つて、「泥棒、泥棒」と叫んだが、男の姿は三間(五・四五四メートル)位前方の庭の暗闇の中に、ぼんやりその白い上衣だけが認められた。
⑶ 右⑴⑵の間に、〔乙2〕が認めた男の特徴は、「腕が半分ほど出ていたから半袖と思うが、白の開襟