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だら敷居のようなところがあり、そこからすぐ座敷で蚊帳が吊つてあつた。蚊帳までは障子その他の障害物はなく、すつと行けた。

8 そこで蚊帳の縁側寄りの裾の真中あたりを少し身体が入る位あけて、伏せるようにして中に入つた。一番手前に被害者が寝ていたが、同女の頭の位置は右敷居から約五〇センチメートル北方、西の壁から約一メートル東方の附近であつたと思う。蚊帳に入つた際には、被害者の北隣りに子供が寝ていたことには気が付かなかつたと思う。
9 被害者は上を向いて寝ていた。その服装は記憶がない。自分は同女の首から腰までの間の右横に、右膝は左膝よりやや同女に近づけてしやがみ、同女の上に屈みながら左手で(その頃凶器は自然に右手に持ちかえていた)、同女の乳房のあたりをすつと触れたら、同女が目を覚ましたようにぐつと動いたように感じたので、咄嵯に気付かれたら大変と思つて右手の凶器で同女ののどをぐつと刺した。刺すときは凶器を逆手に持ち、刃を自分の方向に向けていたが、刺した箇所はのどの真中辺かどうかははつきり分らない。ただ垂直に突き刺したつもりであつたが、同女が左の方(北方)へぐつと首をねじつたので、さらに頸部が切れ、そのときに水が流れるようにゴボゴボというような音がした。凶器を思いきり刺したところ、止まつてそれ以上刺さらなくなつたし、被害者が首をねじつたとき凶器が全然動かなかつたから、頸部を突き抜けて布団に刺さつたと思う。そして被害者ののどから右のゴボゴボという音がした瞬間、余りひどいことをしたなと感じ、また同時に子供のかなり大きな泣き声がしたので、隣に子供が居て、被害者の血を浴びて気がついたのかと思つて、一気に凶器を抜いて蚊帳