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クリ 然り大に尊重さるべし。

ソー 然らば友よ、吾等一般多數の言ふ所を意に介すべからず。たゞ正不正を知れる人の云ふ所、及び眞理を言ふ所を聽くべきのみ。故に君が、正不正、善不善、尊敬すべきこと及び尊敬すべからざることに關して、衆人の意見を心に介すべきものとしたるは、之れ誤謬に始まれるものたるなり。實に或者は云はん『然りと雖多數のものはよく吾等を殺すことを得るなり』と。

クリ 然り、ソークラテース、之れ必ず其答へなるべし。

ソー 夫れ然り、然りと雖、余の見る所を以つてすれば、余の以前より主張せる所の議論は、尙ほ依然として確固不動なるに驚かざるを得ざるなり。而して余の知らんと慾す所は、他の問題に關しても亦同樣の言を爲し得るや、即ち――單に生活と云ふのみに非ず、善良なる生活は主として貴重さるべきものなりとすべきやと云ふにあり。

クリ 然り、亦其言の如し。

ソー 而して善良なる生活は、正しく且つ尊敬さるべき生活と同一な