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大なる利得なりと云はん。何となれば永遠とはたゞ一夜たればなり。然りと雖若し死は他界に旅行することにして、人々の言ふが如く、其所には一切の死せし人在りとせば、あゝ裁判官及び友人諸君、何ものゝ善か之れに優らん。若し死せし旅行者黃泉の他界に到達せば、彼れ現世の正義專門家より救はれて、他界に於て裁判を司る所の眞正の、裁判官を發見することを得べし。即ちミノース、ラダマントス、アイアコス、トリプトレモス及び其他の神の子等、其一身已に正理なりし人々は裁判官たるべく、此旅行や實に價値ありと謂ふべし。人若しオルフェウス、ムサイウス、ヘシオドス及びホメーロス等と談話することを得るとせば、何物を盡くすとも、之れを得んとせざるものやある。否な、若し之れ眞ならば余は再三、再四死せんことを希ふ。余は又た他界の何れかに於て、パラメーデース、及びテラモーンの子アイアス、及び其他古代の英雄にして寃罪の爲めに死せし人々と談話し、彼等の加へられたる害惡と、余の加へられたる害惡とを比較し、以つて語り合ふの樂しみや决して少なからずと思惟せり。而して是等に優りて余の樂しみとなせる所は現世に於けるが如く、未來に於て