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世間は知らずと雖、私かに彼れ余より何事をか學び、或は聽きし所ありと云はゞ、波れ虛言を語れるものなりと諸君の知らんことを希望す。

然りと雖人必ず問はん、如何なれば人皆な君と談話することを喜ぶやと。アテーナイ人諸君、此事に關しては余は已に諸君に全眞理を語りたり。乃ち人々は、余と、かの自稱賢人なるものとの問答對話を聽くことを好めり、之れ愉快なればなり。而して之れ神が余に命じたる義務にして、神託、幻像、及び其他神意が人々に表明さるゝ方法に由つて保證する所なり。アテーナイ人諸君、此は眞實のことなり、若し然らずとせば、余は直に論破さるべきなり。若し夫れ余にして靑年を腐敗しつゝあり、又た已に其或者を腐敗し了りたりとせば、彼等成長するに及びて、其靑年たりし時、余が惡敎訓を與へたることを感知し、今や進みて自ら吿發者となり、余に復讐を爲すべきなり。彼等若し自ら之れを爲すことを好まずんば、其親戚、父兄或は其近親の者は、余の手に由つて、其親緣者が如何なる害を被りたるかを言ひ出だすべく、今は即ち其時なり。是等の人々の多くは今ま現に此の法庭にあり。クリートンも此處に在り、彼れ余と同年輩にして又た