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と想像し得る所以なりとす。――然るに未來界のことに至つては余は殆ど知る所なく、又た知れりと思ふことなしと雖、自己に優れる者――其者神たりとも人たりとも――之れに不正義を行ひ、又た從順ならざるは、之れ不善たり、又た不名譽の事にして、余は確實の惡よりも、寧ろ有り得べきの善を恐れ或は避くることは决して之れを爲さゞるなり。故に諸君若し今回は余を放免し、又たアニュトスの言たる、余は訴へられし上は、死刑に處せられざるべからず、(又た若し余にして死刑に處せらるべきものに非ずとせば、余は當より訴へらるべき筈のものに非ず、)且つ若し今回余にして放免さるゝ時は、君等の子弟は盡く余の言を聽くに由つて淪落に至るべきなりとのアニュトスの是等の言に說破さるゝことなく、又た余に向つて此く云はんか、曰く、ソークラテースよ、今回は、吾等アニュトスの言を採用せずして君を放免せんと欲す、然りと雖一の條件の下に君を放免するものなり。乃ち君は今後决して此くの如き方法を以て討究を行ひ、或は思辯すること勿れ、若し再び是れを爲して捕へらるゝ時は、君は死刑に處せらるべしと」。若し之れ余を放免するの條件なりとせば、余は此く答へん、曰く、アテ