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ありや如何ん。アテーナイ人諸君、余は彼れが答辯を與へ、而して常に余の言語を妨害せんことを力むるなきは余の願ふ所なり。何人か馬術の存在を信ずと雖、馬の存在を信ぜざる者あるか。吹笛術は之れが存在を信ずるも吹笛者の存在は之れを信ぜざるものあるか。否。我友よ君は自ら答辯するを嫌ふを以つて余は君及び法庭に向つて答へん。何人も此くの如き信仰を有せる者なしと。然りと雖も願くは次の疑問に答へよ、曰く、人は精靈及び神の事業は之れを信ずと雖も精靈或は神‐人は之れを信ぜざるものあるを得るか。

否な。

余は法庭の助力に由つて此答辯を引き出だし得たることを喜ぶ。然りと雖君は其吿發書中、余が神或は精靈の事業(其古きと新なるとは問ふ所に非ず)あるを敎へ、又之れを信ずるものなることは、之れを誓へるものにして、兎にも角にも余は精靈の事業を信ぜること、君の口供に誓ひたるが如きなり。然りと雖若し余にして神聖なる諸存在者を信ずとせば、又た精靈或は神‐人を信ぜざるを得ざるなり――余果して信ぜざることを得るか。