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に其の融和に進み行かざるべからず。かくの如き歷程を經て進み行く、是れ即ち理想本具の性質にして、其の歷程を語るもの是れ即ちヘーゲルの謂はゆる、ディアレクティーク(Dialektik)なり。
ヘーゲルは先づ理性が論理的槪念の組織として在る樣を論じて曰はく、まづ有といふ最も抽象的なる槪念に始めむに有(Sein)を考ふれば必ず其の反對に移りて非有(Nichtsein)を考へざるべからず、非有に移れば又必ず有と非有との融和なる轉化(Werden)に進み行かざる可らずと。斯くして其の謂ふディアレクティークに從うて一切の槪念の組織の成り立つ所以を說明せむとせり。以爲へらく、先づ初めに一槪念を考へむに、其の槪念が絕對的理想の全體を盡くすものにあらざる限りは、即ち其れが一方に偏し居るものなる以上は、必ず其の反對に移り行かざるべからず、而して反對に移り行けば更に兩者の一致に至らざれば休まざるべく而して其の一致は更に其の反對を挑發し來たるべし。斯くして終に圓かなる全理想を盡くすに至らずんば止まざるべく、而して全理想を盡くす時は是れ恰も圓環の一點より始め其を一週し終はりて最初の點に還れるが如きものなり。而して斯く通