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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/559

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は回轉すと思へるを破り地球は太陽を中心として廻轉すと見てコペルニクスが始めてよく天文上の問題を解く道を示したるが如く、カントは在來の哲學者が自然界を立法者として吾人は唯だ之れに從ひて其の法則を授かるが如きものなりと見たる關係を倒まにし立法者は吾人にして自然界は吾人の心性を中心として廻轉するものなりと見ることによりて始めて能く知識論上の問題を解き得べしと考へたればなり。

《理智的直觀と物自體、現象界と實體界。》〔二三〕かくの如く吾人は自然界に關して遍通的智識を立し得るものにして因果律等の自然の法則は先天的に必然遍通の効力あるものとして認め得らる、されど其の効力ある範圍は現象界に限る、換言すれば、吾人の經驗の範圍內に於いてのみ然りといふことを得るなり。盖し其等の法則は吾人の經驗其の物の先天的條件なるがゆゑに吾人の經驗し得べきものは必ず皆其等の法則に從ふべきものと斷じ得る代はりに、之れと同一の理由を以て吾人の經驗し得ざる範圍にまでも其等の法則の効力は達すべきものに非ずと云はざるべからず、一言に云へば、悟性の槪念を基礎として自然界の純理哲學は立てらるれども其の純理哲學は吾人の