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其のまゝに守れるにはあらざりき。次ぎに此の部類に屬する彼れが著作の主要なるものは一千七百五十六年に出版せる "Monadologia Physica" なり。彼れは此の書に於いてはライブニッツが謂へるモナドの說を改めモナドを以て多少の廣さを有する而かも單純なるものとなし而して其の結果としてブルーノ風の說に似よれる思想を吐露せり、但し彼れはモナドが空間を占領することを說明して以爲へらく、是れ其が反撥力と牽引力とによるものなり、換言すれば物體が若干の空間を占有し他の物體に對して障礙を呈するは此の反撥力と牽引力との結果にして此の二つの力が相平均したる所是れ物體の界限を成すものなりと。即ち彼れは動力的說明を持して物體の廣袤に關してはライブニッツの說とニュートン風の說との中間に立たむとせる者なりと云ひて可なり。

一千七百六十三年に著はしたる『神の存在を證明する唯一の證據』"Der einzig mögliche Beweisgrund zu einer Demonstration des Daseins Gottes" と題する書に於いては彼れが純理哲學上の確信の已に大に動搖したるを見る。彼れ言へらく、吾人の幸福を全うせむには吾人の自然に具へたる常識の直接に示す所に從うて神の存在を確認するを