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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/45

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るゝことによりて起こる。相對峙するもの無くば凡べては唯だ單一なるなり。ベーメは曾て日光が棚上の錫の器に映じて光り耀けるを見、豁然として此の理を悟りぬと言ひ傅ふ。錫に當たること無くば光は光として耀かず錫も亦耀くことなし。神が相對するものに相分かるゝことによりて光を放つも亦かくの如し、神の智惠がこゝに輝き初むる也、是に至りて眞に活動する神が生まれ出でたるなり。斯く神が自らを觀ることに於いて父と子とに別かれ、而して父の子を觀るはたらきの出づる是れ聖靈也。是に於いて三一神が神の原性より生まれ出でたる也。

ベーメは詳しく神の自らを世界に現はすはたらきを說かむと試みたり。彼れは世界の創造を七段階に分かち、委細に酸の收縮作用及び甘の伸張作用によりて萬象の生する最初の段階より漸次に進みて感覺及び知識作用の生出するに至るまでを說けり。彼れは更に地上の歷史を叙して人間の靈の墮落することより其が再び神に還り彼れに和合するに至る次第を詳說せり。此等はベーメが其の神祕說に雜ふるに自然界の神智學的見解を以てせしものなり。彼れは凡べて豫言者風の語氣を以て其の思想を述べ、其の說く所の言語は頗る晦澁なれとも神祕說に特