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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/421

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にもあらず、されど其の思想を弘布して世俗に入り易からしむることに於いて彼れの力量は多く其の比を見ざるものなりき。彼れが其の椽大の筆を揮ふや如何に神聖なるものも、またいかに權威ある者も爲めに其の權威と神性とを剝奪せられざるを得ざるに至るほどの魔力を有したり。一時彼れが一方にて恰も惡魔の如く嫌惡せられたると共に他方にては鬼神の如くに崇拜せられたるも宜なりと云ふべし。


コンディヤック及びエルヹシユス

《コンディヤックの著述其の感覺的知識論。》〔一〇〕ヺルテールがロックに根據して吾人の知識の根據を考ふるや專ら感覺を其の眼中に置きたれども彼れが主として其の心を注げるは宗敎、道德及び政治上の問題にして心理及び知識論上の硏究には深く思ひを致すことを爲さざりき。心理及び知識の論に其の著眼の點を置き、ロックの經驗主義をして純然たる感覺論とならしめたる者は羅馬加特力敎會の一僧侶なる