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以後十八世紀の英國に於いてヒュームに於いて其の頂上に達したる活潑なる哲學的硏究はこゝに至りて一大段落を吿げ寧ろ衰微の狀態に陷れりといふも不可なかるべし。此の後の哲學史上の壯觀は更に偉大なる更に根本的なる知識論上の解釋を求むることによりて來たるなり。


第四十五章 佛蘭西に於ける啓蒙思潮

佛蘭西に於ける啓蒙時代の大勢

《歐洲近世の啓蒙時代。》〔一〕近世の初めより一方に自然科學が長足の進步を爲し來たれると共にまた他方に之れと相關聯して偉大なる哲學組織の相次ぎて建設せられたるありて十七世紀の末に至りしが之れに次ぎて十八世紀に於ける歐洲思想界の特殊なる現象はそれまでの學術硏究の結果を世間に普及せしむることにありき、殊に哲學上にては英國の經驗哲學起こりて後其の立場より說き出だせる思想は之れを通俗のものとなし易き傾きありき。斯くて主として經驗學派に結びて、凡そ哲學上、科學上、道德上及び宗敎上の硏究の結果として提出されたる世界觀及び人世觀を