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して其の振動の結合することに在りとせり。以爲へらく、心理の方面に於いて聯想によりて單純なる觀念の複維に結合せらるゝが如く生理的方面に於いては單純なる振動が複雜に結合せらるゝなり、盖し單純なる觀念には生理的方面に於いて單純なる運動の應ずるあり複雜なる心作用には生理的方面に於いても亦複雜なる振動の應ずるあればなりと。然れども彼れは此の心理的及び生理的兩方面の關係をば唯だ常に相伴ひ相應ずといふに止まりて更に其の以上の說明を爲さむことを試みざりき、換言すれば心身の關係に就きては彼れは斷然唯物說の立場に在ることを確定せるにはあらず。

《聯想作用の結果。》〔三〕以上述べたる聯想作用の結果として、一つには單純なる觀念が結合して複雜なる觀念と成り上がるに至り而して斯く成りあがることによりて原初の單純なる觀念の跡を沒するに至ること恰も物質元素が相結合して化成物を造るに至れば別異の性質に現じ來たるが如きものあり、二つには初めには意識を用ゐ力を用ゐて爲したることが後に屢〻繰り返さるゝや遂に自動的に無意識に爲さるゝに至る、又三つには一觀念の强くまた活きとしたることが其れに結合し來た