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他物を生ずといふ關係なりとすれば其の必然の關係は何處より吾人の認め得べきものなるか。吾人の確實なる經驗の範圍に止まる間は決して其の如き必然の關係を發見すること能はざるなり。斯くの如く吾人は相次ぎて起こる事物の間に必然の關係を經驗せざれども妙に吾人は一物に次ぎて一物の曾て生じたることを認むるに止まらずして將來に於いてもまた必ず其の如き關係を以て生起し來たるべきことを豫期す、而して斯く將來を豫期する所是れ即ち吾人が因果律を思ひ浮かぶる根據なり。然れどもかゝる豫期の如何にして生ずるかを問へば是れ畢竟ずるに聯想の結果なりと云はざるべからず、從來屢〻甲乙の二物が相次ぎて生じ又は變じたることを經驗したるがゆゑにこれが自然に習慣を成して其の一方を思へば他方を思はざるを得ざる傾向を生じ來たる、斯くして未だ經驗せざる他の塲合に於いても件の二物の同じく相次ぎて起こりたることを思ひ浮かべ而して其の思ひに曾て實際印象として等しき關係を經驗したる時の强さと明らかさとが推移し來たるを以て、其處に一種の信念を生じて今まで經驗し來たれると等しき闢係が未經驗の處にも尙ほ必ず維持せらるゝならむと思ふに至るなり。