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例を以てするなり。斯く一觀念を以て多くの物を代表せしむる所に吾人の用ゐるものは言語なり。例へば吾人は色の黑白、驅幹の大小、及び其の男女なると老若なるとに拘らず人間といふ言語を用ゐて之れを表はすが如し。このゆゑに若し通性或は抽象的のものありとせば其は言語に外ならず。言語あるが故にそれに應當せる觀念ありと思ふべからずと。此のバークレーが論に於いて名目論は更に其の極まれる形を取りて現はれ出でたり。斯く吾人の思ひ浮かぶる所は要するに個性のものに外ならずといふ彼れの論は心理上頗る價値あるものにして是れ亦彼れがロックの論に更に一步を進めたるものと見るべき所なり。
《本體てふ觀念の排除。個々物は畢竟觀念の結合也。》〔五〕上に述べたる第一性質と第二性質との區別を除去したる論と抽象的槪念の存在を否みたる論とは是れバークレーが哲學硏究の根本思想となれるものにして、之れより推究し行けばロックの哲學が如何なる點に於いてバークレーに改めらるべきかは見るに難からず。ロックの哲學に於いて其が正當の位置を占め得ざる本體といふ觀念は正さしくバークレーによりて排除せられたり。其の意に以爲へらく、本體といふが如きものは實際吾人の思ひ浮かべ得るものに非ず、