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なり。此のゆゑに自然を模倣すと云ふことが美術家の最高目的となり來たる。

斯くの如くライブニッツ・ヺルフ學派はバウムガルテン等の唱道によりて獨逸の學界に偉大なる勢力を振ふこととなり、而して此の學派が哲學思想發達の上に功績を遺せるものあるは固より認めざる可からざることなれども、ヺルフに至りては唯理學派は其の極端に至れると共に最も明瞭に其が弱點を發表し來たりたり。彼れは槪念より出立し之れより論理的に演繹して全哲學を組織すといふを其の主眼と爲したれども、其の實際に爲す所を見れば唯だ論理的に演繹し來たるのみに非ずして常に吾人が經驗によりて得たる種々の事件を揷入せり。哲學的硏究が槪念の分析に止まり居る間は吾人の知識は新らしく其の步を進むること能はず、以て能く吾人が知識の事柄なる千差萬別の事物を捕ふるに足らざることは此の學派の人々の實際論述したる所によりて容易に認めらる。又彼等の出立點とする所謂槪念其のものは何處より得來たれるぞと尋ぬれば、吾人の思想は茲に其の方向を轉じて別路を取らざるを得ざるべし。吾人は經驗に依らずして槪念を形づくり其を確實なる論理的硏究の根據と爲すことを得べきか、凡そ吾人の思想