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するが如き靈魂のみ、吾人の靈魂は意識作用を有し而して意識は統一作用を有す。靈魂が意識の統一作用を有することは以て其れの單一なるものなること、換言すれば、他の物の結合によりて始めて成れるものに非ざること、即ち其の本體なることを證するに足る。

ヺルフがライブニッツと其の說を異にせる他の一の著るき點は豫定の調和の範圍を限れる所にあり。ライブニッツは凡べてのモナドに就きて豫定調和論を說きたりしがヺルフは唯だ其を吾人の心身の關係に就きてのみ云へり。此等の點よりして考ふれば彼れは其の主要なる思想をライブニッツより得たるものにして而して其の相異なる點は主に唯だ彼れがライブニッツの說をなだらかならしめて却りて其が特殊の意義風趣を埋沒せしむる如き結果に立ち至れる所にあり。

《ヺルフが倫理法理の論。》〔六〕以上述べたる所よりもヺルフがライブニッツに對して獨立の地位を取れるは其が倫理及び法理に關する論なり。此の方面に於いては彼れはグローチウス及びプーフェンドルフを硏究せるによりて得たる所少なからず。彼れは先づ吾人の道德上の目的を明らかに幸福と區別して完全になることに在りとせり。