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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/231

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に對して唱へ出でたる多元說の見地をば更に言表せるものに外ならず。斯く實在は個々各〻定相を具ふるもの而して其の各〻をして定相あらしむる所以の原理は即ち理由則にして其れに定相を與へし所以が其の物自身に在る時には其は絕對に必然に存在するもの、換言すれば、自存のもの(a se)なり、若しまた其れに定相を與ふる所以のものが他に在る時は其は依他のもの(ab alio)即ち偶然のもの、換言すれば、他に依りて始めて必然に存在するものなり。ヺルフが斯く說ける所は是れライブニッツ風の思想にスピノーザ風の思想の加昧せられたるものに外ならず。ヺルフは物界を以て一の機械と見做せり。以爲へらく、凡そ物界に生起する事件は皆機械的に必然に出來するものにして物界の最小部分と雖も其の現實在るに異なりて在らむには全物界の別世界となることを要す。斯く物界の事は凡べて必然に起こるものなれどこは畢竟依他の必然にして唯だ他に一の物理的變化ありしに依りてこゝに亦一物理的變化の必然に起こるもの也。かるが故に物界に於ける一變動は唯だ他に一變動ありしが故に然るのみにて此の機械的必然の關係を以ては物界全體の然る所以を說明するに足らず。物界全體の然る所以を說