Page:Onishihakushizenshu04.djvu/198

提供:Wikisource
このページは校正済みです

ののみ選擇せられて茲に大調和を實現したる宇宙は形づくられたる也。

斯くの如くライブニッツの思想にはスコラ哲學に、更に溯れば已にプラトーンに見ることを得る實在論の彩色ありて、實在完全とが同一視せられたりと思はるゝ所あり、而してこゝに彼れが哲學の一大動機なる目的觀の和合し來たれるを見る。彼れが諸物の存在には其の存在する十分の理由なかる可からずと云へるは彼れに取りては其が存在するに宜しき目的ありと云ふと同じ。即ち彼れに取りては原因と目的とは究竟するところ同一義となる、而して彼れの哲學に於いて用ゐらるゝ主要なる原因は件の因果律又は理由則なり、而して彼れは此の理由則を言ひ表はして何物も其の存在する十分の理由を有せずに存在すること無し(principium rationis sufficientis)と云へると共に又之れを言表して優れるものの存在する原理(principium melioris)とせり、謂ふこゝろは凡そ物は其の優れる度に從うて存在を與へらると云ふにあり。

先きにライブニッツの揭げたる法則の一として世に全く相同じきもの無しと云ふことを說きたりしが、是れは畢竟上述せる理由則に基づく。若し二物全く相同