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《心は複雜なる念の結合より成る。》〔一二〕一個體が種々の部分を以て成るが如く心も亦種々の念を以て成る。一個體とは其の部分が或定まりたる相互の關係を保ちて、部分を成す物質は縱令新陳代謝すとも尙ほ一定の形を具ふるものの謂ひなり。而して其の如き一個體は同樣なる他の一個體と結合して更に高等なる一個體を成し、それが尙ほ他の一個體と結ばりて更に高等なる一個體を成す、かくして萬有全體は遂に一個體を成せるものと考へらる。(自然界に關する觀念に於いてスピノーザが如何にブルーノ等のルネサンス時代の世界觀に影響せられたる所あるかを看よ。)而して其等個體の凡べての段階は皆それぞれに多少心作用の伴ひ居るもの也。換言すれば、物體に於いて多少複雜なる運動の結合のある所には必ず觀念の多少複雜なる結合の伴へるあり。吾人の身體はかゝる複雜なる結合を成せる一個體にして吾人の心も等しく複雜なる觀念の結合せるものなり。所謂吾人の心は其等の觀念の相結合せるものに外ならざること猶ほ身體がそを組成する種々の部分の結合せるものに外ならざるが如し。

《感覺の性質、念の法則。》〔一三〕吾人の身體が他の物體によりて影響せらるゝ時に、換言すれば、吾人の