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て理由と生因とを混同せしより起これるものなり。
《個々差別相の變化の直接原因は同じく之れを差別相に求めざる可からず。》〔八〕差別の相卽ち個々物の出沒變化する所以を以て直ちに本體に求むること能はず、個物變化の直接の原因(causa proxima)は同じく差別相其のものの中に求めざる可からず。吾人は有限樣よりして直ちに無限の本體に上ること能はず。ここに一物の動くあるは其をして然らしむる他の一物卽ち限りある物の存すればなり。故に限りあるものの變動は凡べて他の限りあるものの變動に依りて說明せざる可からず、有限の物は其の物それ自身に於いて存在すべき必然の理由を有せず。唯だ他の一物の在りし爲めにたま〳〵そこに存在するのみ。此の意味にてスピノーザは個々物の存在を偶然のもの(contingens)といへり。無限なる本體は必然に存在するものにして其を存在せざるものとは考ふべからず、然るに此の一物、此の一念は之れを存在せざるものとも考ふるを得べし、唯だ其の存在するは其處に他の一物、他の一念の存するあればなり、換言すれば、此等皆依他起生のものに外ならず。必然に神の圓滿相より來たると考へ得べきは唯だ心及び物に於ける樣狀の全體卽ち先きに所謂無限樣あるのみ。