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へ出でらるべきことを以て該原因に生じたるものと見たり。故に彼れは謂ふところ自因を說明して其を考ふることに於いて必然に其の存在を認めざるを得ざるもの也といへり。スピノーザが所謂因果の關係は猶ほ理由と結論との關係の如し、彼れは萬物は神によりて存在すといふも其は神が意志を用ゐて造化したりと云ふに非ず、吾人は神其の者に意志といふが如き定限ある相を附すること能はず、盖し意志は個物として他の個物に對するもの例へば人間の如きものに於いて始めて言ひ得べきものなれば也。また萬物、神によりて存在すとは萬物は神より發出せりと云ふ義にもあらず、本體より出でてそれ以外に物の存在せむやう無ければなり。萬物は唯だ神の必然の性質によりて存在するものにして其の關係を譬ふれば恰も三角其の物の性質と三角形の角度の和が二直角に均しと云ふこととの關係の如し。三角形の角度の和が二直角に均しといふは三角形の性質其のものに具はれる必然の結果なり(結果といふも唯だ其の如き意味にての結果なり)、三角形以外に角度の和の二直角に均しと云ふことのあらざる如くに神以外に萬物は存在せざるなり。神は萬物に於ける內在的原因(causa immanens)なり、萬物以外