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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/128

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攝入せられたるありておのづから一種の特色を帶びたる一大組織を成すに至れるなれば彼れをジューランクス及びマルブルンシと同列にならぶ可からず。


第三十三章 スピノ一ザ(Baruci Spinoza

《スピノーザの生涯、著書、性行。》〔一〕スピノーザの哲學は其の根本的思想に於いてデカルト哲學發達の潮流に屬せる者多しと雖も又彼れに於いてはホッブス等が自然說ぶりなる思想の相交はりて存在せるあり。別言すれば、彼れに於いてはデカルト學派に屬せるものの外に其れとは頗る其の趣を異にせる而かも同じく第十七世紀の特殊なる思想と見るべきものの集合せるを認む。此の點より見るも彼れは歐洲近世の哲學史上一種の特色を帶び異樣なる光彩を放てる思想家なり。彼れは久しき間神學者等に嫌惡せられ「名高き無神論者」として言ひ傳へられたる程なりしが後にはまた漸々其の哲學の眞價値を認むる學者出で來て終には彼れを「神に醉へる人」とまで名づけたるノファリスの如き者あるに至れり。

スピノ一ザは一千六百三十二年十一月廿四日和蘭のアムステルダムに生まる、其