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象を說明せむとせし時にしてこれを物界硏究の時代と名づくべし。第二期は考究の興味をさ吾人自己の事に傾きし時にしてこれを人事硏究の時代と名づくべし、是れ即ちかのソフィスト及びソークラテースの出でたる時なり。故に或は前の第一期をこの期と區別してソークラテース以前の時代ともいふ。第三期は組織的時代にしてかのプラトーン、アリストテレースの出でて大哲學組織を立てし時即ち希臘哲學全盛の時期なり。第四期を倫理硏究の時代となす、倫理の硏究を主眼として之れによりて以て個々人が安立の地を得むと欲せし時なり。第五期即ち末期は希臘哲學が漸く宗敎的傾向を帶び來たり人々出世間の處に安心立命の地を得まくせし時期なり、この期は東方殊に猶太的宗敎思想の影響をうけしこと著るき時にしてこれを前の尙ほ純粹なる希臘思想の立脚地に立てりし第四期と區別して希‐臘‐東‐邦的時代といふを得。又この第四第五の兩期を合してアリストテレース以後の時代と名づくるを得、所謂希‐臘‐羅‐馬の哲學は此の時代に屬せるものなり。