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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/506

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に謂ふ天地間の物皆各〻全世界を縮寫すといふ思想は後にしば吾人の遭遇する所のものなる也。

《ニコラウスに於ける純理哲學的思想と自然科學的傾向との結合、スコラ哲學の結末。》〔二〇〕吾人はニコラウスに於いて神祕的及び萬有神敎的臭味を帶びたる純理哲學的思索に自然界の科學的硏究の傾向の結ばれたるを看る。彼れが近世學術の一大動力とも謂ふべき數學に重きをおける、またピタゴラス及びプラトーン等の希臘の先哲を貴べるが如き皆是れ將さに轉變せむとする時代の精神を顯はせるものに非ざるはなし。エリゲーナは新プラトーン學派風の臭味を帶びながら嚴密なる意味に謂ふスコラ學と神祕說の要素とを、共に其の未だ明らかに開發せられざる狀態に於いて包含してスコラ哲學の濫觴となり、ニコラウスは變遷せむとする時代の精神に動かされながら尙ほ全く中世紀の世界觀を脫せずして敎會と其の宗義とに忠ならむとせることに於いてスコラ哲學の結末をなせり。

《十字軍の影響、法王制の衰微、スコラ哲學の解體。》〔二一〕羅馬敎會が其の全盛を極め、スコラ哲學が盛んに生長しつゝありしに當たり恰も中世紀歐洲の社會に變動を來たすべき大原因となりし十字軍は行はれつゝありき(第一回十字軍は自一千九十六年至一千九十九年、第八回十字軍は一