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スコラ哲學第二期

第二十六章 全盛時代

《アリストテレース哲學の主權時代。》〔一〕猶太學者及びアラビヤ學者の著作は猶太人の手によりて歐羅巴の基督敎國に傳へられたり。是に於いて希臘哲學は一は猶太及びアラビヤの學者みづからの論議せるもの(これは槪ねアリストテレース及び新プラトーン派の學風を帶びたるもの)により一は彼等がアリストテレースの著書を翻譯せるものによりて漸次歐洲の學者間に知れわたりぬ。最初には唯だ寧ろ肝要ならざる一部分の外は知れざりしアリストテレースの論理學も今や其の全部の知れわたるに至り又其の純理哲學、物理學、心理學等も次第に傳へらるゝに至れり。斯くして中世紀學者がアリストテレースを受容したるは略〻第十二世紀の中ごろより第十三世紀の中葉に至る一百年間に於いてなりき。

最初かくして基督敎國に輸入せられたる希臘哲學の著作は新プラトーン學派風の臭味を帶びたるもの多かりし故を以て敎會の反抗を受け而して此の反抗は初