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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/45

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ことを承認せざるべからず。かゝる個人の差別が何によりて生ずるかは如何やうに說明すとも此の如き差別ありてこれが實に哲學變遷の主動力となることは否むべからざる事實なり。哲學の歷史は今說明したる固定一致の傾向と變動の傾向とによりて織りなさるゝもの也。

かるが故に哲學史を硏究するには一には先人の學說に對する關係を見、一には其の時代の影響を見、又一には個人の特質獨創のところを見ざるべからず、哲學史は此の三方面より講究するを要するなり。

《生起上の關係を明らかにせざるべからず。》〔六〕右の三方面より哲學の變遷を見るを要する故に哲學史は唯だ學說を臚列するのみをもて足れりとすべからず、ただ學說を記述するにとどまらず其の學說の出で來し所以又その變遷し來たりし所以を說明せざるべからず、言ひかふればその生起上の關係を說明するを要するなり、而してかゝる生起上の關係は件の三方面より見て始めて明らかなるべし。哲學史家としてはまづ須らく事實を明らかにし變遷の跡を審にすべし、みだりに學說を是非褒貶するは史家の面目に愜はざるなり、そは旣往の歷史に徵するも萬人の承認すべき完全なる哲學未だ出で