コンテンツにスキップ

Page:Onishihakushizenshu03.djvu/391

提供:Wikisource
このページは校正済みです


《新プラトーン學派の主旨。》〔一〕宗敎時代に於ける希臘哲學の最も大なる代表者は新プラトーン學派なり。此の學派に於いて希臘哲學思想は其の最後の組織を試みたるなり。新プラトーン學派の主旨とする所は大體上希臘思想の立塲に在りて一の宗敎的哲學を形づくらむとするに在り。而して此の學派の哲學は宗敎的なると共に神祕的方面を具へ、此の點に於いていたく印度の思想に似たるのみならずまた實際印度思想の流入し混和せる所ありきと考へらる。元來希臘哲學の起原は寧ろ通俗の宗敎と分離することにありき、其の後學術の發達し又全體の文化の進步するにつれて宗敎はます其の勢力を敎育ある社會に失ふに至りき。こゝに叙述せむとする新プラトーン學派は即ち學者の宗敎を組織して件の缺乏を充たさむとせるもの換言すれば哲學を以て宗敎を造らむとせるものなり。盖し當時思想界の大勢の赴く所昔時の宗敎が啻に學者間に於いて勢力を失へりしのみならず一般人民はた統一せる宗敎を缺き幾多の宗門が羅馬の天下に相輻湊し牴觸して遂に新宗敎的現象をも催起し來たりき。新プラトーン學派は啻に學者の宗敎のみならず更に進みて一般の人民の宗敎を組織せむと欲するに至れり。而して其の取る