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西洋哲學史上卷
緖論
《哲學は如何なる學問なるか。》〔一〕こゝに叙述せむとするは哲學の歷史なり。そも哲學と名づくるは如何なる學問なりや。其の問題の解釋の不變不易ならざるのみならず其の考究の範圍即ち哲學の問題それみづからも亦全く一定せりと謂ふべからず、當に如何なる事柄が斯學硏究の範圍に入るべきか、其の問題の眞に何處に存するかが是れ亦一の問題たるなり。この故に哲學史を講ずるにあたり、豫め或一派の哲學思想を取り來たりてそが特殊の見地より哲學を解せむは穩當の事と謂ふ可からず、こゝには之れを爲さざるべし。問題を呈出することの正しく又明らかなるを得ば是れやがて其の問題の眞實の解釋に一步を進めたるなり、明暸に正當に問題を言ひあらはさむは哲學硏究上決して容易き事にはあらじ。