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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/386

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らく、物質には本來惡しき靈の宿り居れるがゆゑに造化の作用を受くるも尙ほ全く善ならずして常に醜惡なるもの、不完全なるものの此の世に存するの原因たりと。即ちプルタルコスは明らかに宗敎的哲學の思想に於いて二元論の立塲を取れるなり。また彼れは神を以て世界の外に在るものと考へたるが故に神と世界との間に媒介を爲すものとして鬼神を置けり。また以爲へらく、諸種の人民が諸種の異なる神を崇拜するも實は異なる名稱を以て同一の神を呼ぶに過ぎず。吾人は甚だ孱弱にして自力のみによりて目的を達すること能はざるが故に神の直接の啓示と冥助とに依らざるべからずと。

上に云へる如き鬼神の說を取り用ゐて多神敎を立て以て當時漸々勢力を得むとせる基督敎の烈しき反對者となりしケルソスも亦右に揭げたる部類の一人に數へらるべし。


フィローンの哲學

《フィローン哲學の根本思想。》〔八〕前條に述べたるは希臘哲學思想の東方の宗敎思想に近よれるものの代