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ものあるを自覺してこゝに稚き優美なる調和は破れたり。盖し希臘固有の思想は槪ねうぶなる調和を維持せりしが、ただ其の思想の偉大なる發表者の中、後の宗敎的感想を豫想せる所あるはプラトーン哲學也。是れプラトーンが希臘人にして希臘人を超越せる所ありと云はるゝ所以也。プラトーンは其の哲學に於いて吾人にわが形骸の束縛を脫して高く理想境に上らむとする心のあることを云ひ現はせり。 倫理時代より宗敎時代に移りてはます〳〵外物の賴むに足らざることを覺りて深く各人內部の精神的生活を顧みるに至り我が實行の理想に合し難きを自覺し來たり形骸の束縛に起因する物欲劣情を脫して純粹なる心靈的生活に入らむと力むる心盛んなるに至りぬ。是に至りては倫理時代の立塲なる世間的道德を修めて安心立命し得べしとなしたるとは異なり頗る出世間的趣味を帶び來たれり。是れ希臘の哲學思想が所謂宗敎時代に入れるなり。件の宗敎的傾向益〻進むに從ひて個人が自力を以て我が形骸の束縛を脫し難きを感じ遂に人間以上の冥助を必要とするに至りぬ。是れ先きにストア學派の變遷を叙したる所に述べしが如