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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/333

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足せず道德的理想の眞實成就せられむには更に宗敎的境界に入らざるべからざることを感ずるに至り宗敎的傾向次第に盛んなるを致して遂に宗敎時代となれり。是れアリストテレース以後なる時代の後期即ち第五期にして古代哲學の末期なり。

《此の時代に並存せる諸學派。》〔五〕此の時代に並び存したる學派を舉ぐればプラトーンの學派即ち古アカデミー、ペリパテーティク學派、及び此の時代に新たに起これるストア學派、エピクーロス學派、懷疑學派是れなり。古アカデミーとペリパテーティク學派とは其の開祖所說の大體を維持して時の學派の論爭に與りて多少の力ありまた當時代の大潮流なる實際的傾向に多少感染する所ありしがしかも此等は當時の思想界を率ゐたるものにはあらず。其の思想界の大潮流を代表し當時の學界の大勢力となれるものは後なる三學派なり。此等の學派は實に此の時代に特殊なる產物なり。プラトーン學派又殊にアリストテレース學派は廣く諸種の學科を硏究せる點に於いては當時の新潮流を代表するストア、懷疑、エピクーロスの三學派が實際的問題に專なるが如きとは其の趣を異にせる所あり、然れども當時の道德的生活に實