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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/306

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りしなり。

《純粹の相と純粹の素と。》〔二〇〕アリストテレースは上述せる如く二元的に說き來たりて事物の段階を論じて曰はく、素の方面の多きほど卑く、相のかたに進むに從うて高し、天地萬物は皆此の關係を以て高下を爲すと。是に於いて彼れは遂に最下の處に原始の素(πρώτη ὕλη)を置きて、之れを純粹の素にして未だ聊かも相を現せざるものと見、唯だ受動の方面のみを具へて聊かも原動の方面を有せざるものとしたり。原動力即ち形づくるものは相の方面にあり。然れども個々の事物は素の方面をも具ふるを以て全く原動力の方面のみならず受動の方面をも有す、故に其の物以外にそを動かすもの即ち原動力となるものなかるべからず。かくして漸次に事物發動の原因を探り求むれば遂に他より動かされず即ち受動の方面なくして唯だ他を動かすものなかるべからず。若し聊かなりとも他に動かさるゝ所あらば更に其の上に立ちて之れを動かす原動力なかるべからず。故に事物が變動を現ずる所以を說明せむとせば一方に於いて純粹なる原始の素を說くを要すると共に他方に於いて純粹の相即ち原始の相(πρώτος εἶδος)を說かざるべからず。是れ即ちアリス